第30話 「合成の誤謬」
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立場にある。貴族が公然と反抗すれば、取り潰せる立場にあった。それは貴族達ですら分かっていただろう。
にもかかわらずルードヴィヒのような強権を振るう事はなかった。
現在の研究では、見る目、批評眼を持っていたとされるフリードリヒ四世だが、強権を振るった後、新しい帝国のあり方。ルドルフ的なものから脱却したのちの帝国を創設しえない事を、自覚していたからではないだろうか?
皇太子(当時)が改革に乗り出した際、フリードリヒは完全に、息子であるルードヴィヒに全権を委譲している。
皇帝と皇太子は権力的な意味において、対抗し、敵対する存在ともなりえるのだ。
にもかかわらずフリードリヒ四世は、権力を委譲しているのだ。
これは見る目の有ったフリードリヒ四世にとっては、ようやくルドルフ的なものを刷新しえる人物が現れた事を認識できたからだと思われる。
それが自分の息子である事に、フリードリヒ四世は唯一の廷臣ともいうべき、グリンメルスハウゼンにのみ、喜びと共に漏らしている。
その観点から見れば、克服、脱却する対象としてのルドルフを、持っていないルードヴィヒの再建した銀河帝国は新銀河帝国と呼ぶべきものであり。
ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムは新銀河帝国の初代皇帝とも言えるのである。
ルードヴィヒ即位以前と即位以後では、明らかに違う帝国を見ているようだ。
もっともルードヴィヒ以後の帝国はルドルフ的なものではなく、ルードヴィヒ的なものに呪縛されていく事になったのは、歴史の皮肉とも言えるだろう。
そしてルードヴィヒ以後の帝国は、ルードヴィヒ的なものからの脱却を目指す事になっていく。
ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムとは、銀河帝国の皇帝の中で、もっとも不可解な皇帝の名前である。
(とある歴史家の著書より抜粋)
■宰相府 クラリッサ・フォン・ベルヴァルト■
「はい、やり直し。訂正を要する」
はあ〜また、カール・ブラッケさんの持ってきた法案を、宰相閣下が突き返してしまいました。
内容までは、難しくて私には分からないのですが、宰相閣下はお気にいらないようです。
もう何度目でしょうか?
今度こそはという感じで、持ってくるのですが、一瞥しただけで突き返しています。
「あの〜差し出がましいですが」
「うん?」
「宰相閣下はどこが気に入らずに、読みもせずに突き返すのですか?」
あれでは、さすがにカール・ブラッケさんが、かわいそうになってきました。
「はるか昔の事だが、女性の服装における運動が起こったことがある」
「はい?」
「まあ聞け。奇抜な、その当時としては奇抜と思われていた服装をしていた女性が、入店を断られたとして、とあるホテルを訴えたんだ。まあ裁判では負けたわけだが、そ
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