第十七章
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イツからここまで来たのだからな」
「ドイツから」
「はい」
男は本郷の言葉に答えた。そして帽子を上げた。そこには青い目をした初老の男がいた。髪は白髪となっている。
「ドイツで神父をしていましてね」
「唯の神父ではないでしょう」
「わかりますか」
神父はそれを聞いて微かな笑みを浮かべた。
「確かに私は唯の神父ではありません。教会から退魔師の称号を受けております。言うならばエクソシストのようなものです」
エクソシストは教会に実在する。映画にもなっているのでよく知られている。だが彼はそれとはまた違った特別な仕事に携わっているようであった。
「魔物を専門に倒す、ね」
「つまり俺達の同業者ですか」
「そういうことになるでしょう。ただ」
「そちらはバチカン専属、俺達はフリー。どうやら立場の差は歴然としているようですね」
「ははは」
神父はそれを聞いて笑った。
「それでも何かと大変ですぞ。バチカンは」
「わかっていますよ」
バチカンと邪悪なる者達との戦いは長きに渡っている。それは人類の歴史の闇の部分であり決して表には出ない。だがその戦いが今も続いているというのは事実である。そして彼のような者もいるのも事実なのだ。
「バチカンのことはね」
本郷もそれはわかっていた。だから多くは尋ねなかった。質問を変えた。
「それで貴方の名は」
「ヘルバルトと申します」
「ヘルバルト」
「ヘルバルト=フォン=ローゼンクロイツ。それが私の名です」
「ローゼンクロイツか」
それを聞いたアルノルトの眉が動いた。
「懐かしい名だ」
「知っているようだな」
「知らぬと思っているのか。古の者が」
ローゼンクロイツ、日本語にすると薔薇十字団となる。錬金術を極めたとも言われる謎の集団である。フリーメーソンの前身であるとも言われているがその実態は謎に包まれているのだ。
「その名を冠しているとはな。只者ではあるまい」
「少なくとも魔を倒すことはできる」
ローゼンクロイツ神父はそう言葉を返した。
「覚悟はできているな」
「一つ御前に聞きたいことがある。いや、御前達か」
「何だ」
神父だけでなく本郷も彼に顔を向けた。
「御前達は今まで自分が何を食べたか全て覚えてはいないだろう」
「昨日の夕食なら覚えているけどな」
「戯れ言はいい。覚えている筈はないな」
「だったらどうだっていうんだ」
「ならばよい。それは私もだ」
「つまり貴様は我々も糧に過ぎないと言いたいのだな」
「その通りだ。よくわかったな」
アルノルトはそれに答えてうそぶいた。
「私はこう見えても味には五月蝿くてな。女の血だけを飲むのではないのだ」
「両刀使いならお断りだぜ。俺はそっちの方は興味がないんだ」
「糧はまた違う。時には神父の血もよい
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