第四十一話 助けてくれ、過労死しそうだ
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はそれを抑えるだけの力を持たない。帝国は未来に対して何の展望も持たず少しずつ崩壊に向かっている、緩慢な死を迎えようとしている……」
「……」
リヒテンラーデ侯は何も言わなかった。反論しないのは思い当たるフシが有るからだろう。俺から見ても帝国の未来が明るいとは思えない。
「先帝陛下は帝国をこの緩慢な死から救う方法を考えました。方法は一つ、絶対的な権力を持つ人物を作り出し、その人物にこの帝国を預けるというものです。絶対的な権力を持つ人物だけがこの帝国を再建できる、そう考えたのですよ」
「馬鹿な、……卿は一体何を言っているのだ」
リヒテンラーデ侯の声が震えている。いや、声だけじゃない、身体も震えていた。
「分かりませんか? この内乱は先帝陛下とその協力者であるグリンメルスハウゼン元帥が作った壮大なゲームなんです。平時では絶対的な権力を持つ人物を作り出す事は出来なかった。だから内乱を起こす事で作り出そうとしたんです。ゲームの名は帝国の覇権、覇権を握った人物には帝国の再建が委ねられる。いや必然的に帝国を再建せざるを得ない立場になる……」
「馬鹿な……」
リヒテンラーデ侯が呻いた。
「選ばれたプレイヤーは四人です。門閥貴族からブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯。宮廷政治家からリヒテンラーデ侯、そして軍人からは平民である私……。良く選んだものですよ、立場も違えば価値観も違う」
司令長官が笑い出した。皆が呆然と司令長官を見ている。ゲーム? プレイヤー? グリンメルスハウゼン元帥が協力者?
「有り得ない! そんな事は有り得るはずが無い! 卿の考え過ぎだ!」
国務尚書が叫ぶように否定した。司令長官が更に笑い声を上げた。
「グリンメルスハウゼン元帥が何故あんなにも軍人である事に、戦場に出る事に拘ったと思います?」
「……」
司令長官の問い掛けにリヒテンラーデ侯が黙り込んだ。
「周囲がグリンメルスハウゼン元帥を退役させるようにと懇願したにもかかわらず何故先帝陛下はそれを退けたのか?」
「……」
「最後に選んだプレイヤーである私の立場を引き上げる為ですよ。それ以外には無い」
「……馬鹿な」
「元帥府を開き、私に人を集めさせ、そしてそれを私に譲り渡した。元帥、宇宙艦隊司令長官に推挙してです。それでも信じられませんか?」
リヒテンラーデ侯が呻き声を上げた。侯だけではない、彼方此方で呻き声が上がっている。そして皆が顔面を強張らせていた。怯懦とは無縁のミッターマイヤーでさえ顔面を蒼白にしている。
「グリンメルスハウゼン元帥は先日亡くなられたそうですね。病死とのことですが本当にそう思いますか……」
「どういう意味だ?」
「貴族達が大勢死にましたからね、その事に罪の意識を感じたのかもしれません……」
自殺、という事
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