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Cross Ballade
第1部:学祭前
第1話『交錯』
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からあわててとびのき、落ちた小物を急いで拾い上げる。
「あ、ちょっと……」
 澪が止めるのをよそに、少女は立ち上がって、妹といそいそと行ってしまった。
 立ち上がろうとして、ふと澪は気づいた。カードみたいなのが落ちている。
 拾い上げてはっとした。
 それは学生証で、そこには

『榊野学園 1年4組 桂 言葉』
 
 と書いてある。
「かつら、ことのは、と読むのかな? うちより1つ下か。さっきの人が落としていったのか」
 あたりを見回すが、もう言葉という少女の姿はどこにもなかった。


 学生証はとりあえず店にあずかってもらうことにして、澪は店を後にした。
 歩きながらぼうっと考えるのは、学園祭当日のことではない。
 先ほど目を合わせた、桂言葉のことばかり。
「綺麗な子だったなあ……」
 自分と同じように長い髪を腰まで垂らしている。どちらかといえば人慣れしてなさそうな所も、自分と似ている。
 でも自分はつり目で長身。彼女は小柄な体で、ルビーのような綺麗な瞳をしていた。
そして何よりあの胸。
「あれEカップかな……いや、それより大きいだろうなあ」
 胸は母性の象徴であると聞いたことを思い出し、澪は自分の体に触れてみる。
「ああ、ぴったんこ……。いけないいけない、演奏のことを考えなくちゃ。
帰ったら特訓、特訓! それにサインの練習もしないと……。 ああ、大恥かかないといいけどなあ……」
 がっくりしながら、澪は家路を進む。


続く

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