第1部:学祭前
第1話『交錯』
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すと、少女はカバンから本を取り出し、見ながらノートに何かを書き始めた。大かた自分と同じで、宿題に取りかかっているのだろう。
「お姉ちゃんも大変だねえ」
妹がノートを覗き込みながら話しかける。
「まあ、榊野学園は進学校だからね。急に勉強が難しくなって大変よ」
「でもサクサク解けているねえ」
そんな会話を話し半分で聞く澪。
宿題が少ないのか、それともこの少女の頭がよいのか、30分ぐらいで宿題は片付き、少女は妹と食事をとることに。
澪の方は宿題も終えていたし食事も終えていたが、この少女のことがちょっと気になるので、しばらく粘ってみる。斜向かいに面しているので、少女の表情がよく見てとれた。
不意に妹は、
「誠君とはどこまでいってるの? お姉ちゃんの彼氏なんでしょ?」
「心、やめてよ」
姉は顔を赤らめて答える。
「そっか、けんかしているもんね……」
心と呼ばれた妹は苦笑いを浮かべる。
「学祭には仲直りするから。そして2人で回って、それから……」
男女の色ごとに興味をそそられるのは人情らしい。気がつくと澪は、耳をそばだててこの姉妹の会話を聞いていた。
「あたし聞いたよ。榊野学園の伝統と伝説」
と心。
「ぶっ…………!」
姉は飲みかけていたコーヒーを吹き出す。
「彼女と彼氏が、2人で学祭を回って、それから隠し休憩所で『ちぇりー』を……」
「やめなさいっ!みんな聞いてるわよ!!」
姉は赤い顔で怒鳴った。もちろん小声で。
なんかいやらしいことでもやんのかな。そう思って澪はさらに体を傾ける。
「とにかく、そのあとキャンプファイヤーで二人で踊ると、そのカップルは永遠に一緒になれるという話なんだよね」
心はニヤニヤしている。
「心、それはあくまでもおまじない。実際はただ、榊野には娯楽が少ないから、アベックが羽目を外し過ぎるだけなんだってば。あれだけ先生が目を光らせていても」
ため息をついて姉はチーズバーガーをかじり、憂いを帯びた表情になる。
「私はただ、誠君と仲直りしたいだけ。そして、誠君とずっと一緒にいたいだけなのよ……」
澪は何となく、この少女の手助けをしたい気分になっていたが、まさか言いだすわけにもいくまい。
時計を見てそろそろ帰らないとと思い、立ち上がる。向こうは時計を見て、
「いけない、もうすぐ門限の時間だわ! 心、帰るわよ!」
とあわてて荷物をしまってゆく。
門限って、どこかのお嬢様だろうかこの子。
そう思って階段へと歩いていると、少女が横からぶつかってきた。
「わっ!」
「きゃ!」
したたかに体をぶつけてお互いしりもちをついてしまい、スカートに入った小物が地面に飛び散る。
ごめん、澪がそう言おうとすると
「あっ!!ごごごめんなさい!」
少女は自分
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