第1部:学祭前
第1話『交錯』
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見当たらなかった。早めに帰ってしまったんだとか。
踵を返す誠に、4組の女子生徒の噂話が聞こえる。
「あいつ、桂にたらしこまれているのかなあ」
「きっとそうよ。ほんとむかつくよね。とろい癖、胸ばっかりでかいあのフェロモン女は…」
それを聞いて、誠はつぶやく。
「本当に大丈夫かなあ、言葉…」
桜ケ丘から少し離れた、青い屋根が目印のコンビニ。
唯はそこで、弁当を買うのが最近の日課になっている。
そこは榊野学園からも近く、生徒達もしばしばたむろす。
彼女は漫画雑誌を読むふりをしながら、ちらちらと振り返って、レジの様子を見る。
最近、いつもこのコンビニに来る、ある榊野男子生徒を求めて。
始めてみかけてから、いつも顔を見るたび、ドキドキしていた。
いた。
スーツに近い学生服を着た、優しい顔の好男子が、背の高い馬面の友人と雑談をしながら、レジに並んでいる。
その大きな目を見た瞬間、唯はドキリとなる。
と、好男子が勘づいたらしく、唯の方に目を向ける。
あわててそっぽを向き、漫画に夢中なふりをする。
唯の耳がキャッチする、好男子と親友の話し合い。
「誠、何かあったのか?」
「いや……誰かに見られているような気がしたんだけど……何でもない」
「神経が過敏すぎるんだろ」
それっきり、取り合わなくなる。
唯は再び振り向き、斜向かいのレジで、誠と呼ばれた好男子が、友人と一緒に会計をしてるのを見る。
その少年の穏やかな微笑みを見て、思わず胸がどきどきしていた。
唯は、恋する少年の名前を、頭の中で反芻していた。
誠、か……。
誠……。
誠……。
彼女は携帯カメラで、ほほ笑んで去っていく誠の横顔を撮っていた。
「まったく、学校といい先生といい話を進めすぎるんだよ…………」
下校途中、ファーストフード店の2階で宿題を片付けながら澪は独りごちた。話し声が多少耳につくものの、自宅より大いにはかどる。
「梓の話じゃ榊野は偏差値高くても風紀よくないって噂だし……。
そもそもティータイムばかりの私らが他の学校で演奏すること自体、無理だっつーの。逆ナンパも恥ずかしくてできるか。
当日になったらとんずら……駄目だ駄目だ。こうなったらやけ食いか……?」
文句を言いながらふと顔を上げると、1人の少女が目にとまった。
自分……じゃない。黒髪を腰まで垂らしたおそろいの髪形だからそう思っただけ。
前髪も違うし、目だって自分とは違って丸くつぶら。
それ以上に……胸が妙に大きい。
目をそらそうとしても視界に入るほど。どんくらいの大きさなんだ。
傍らにいるのは10、11歳位の子供。見た目も似ているし、大方彼女の妹だろう。
自分の隣の席に座り、妹のハンバーガーセットを渡
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