第1部:学祭前
第1話『交錯』
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「泰介!?」
誠はぎょっとして親友を見る。
「俺の見るところ、可愛い女の子たちが多いと見た。合併したらハーレムみたいになるから、学校側も合併しようと思ってたりして」
と、泰介。
「大奥の間違いだろ! つーかそんな理由で合併するか!」
誠はあきれる。
「距離的な問題もあるんだけど」世界がちょっと口を出した。「榊野は知育・受験重視でしょ? 桜ヶ丘は哲学を中心に徳育に力を入れてるらしいの。
ハリー・ポッター風に言うなら、私達がレイブンクローで、向こうがハッフルパフ。
合併して知育と徳育が両立した学校を目指すっていうのが、両者の目的らしいのよ」
「おいおい、水と油じゃないか…」誠がため息をつく。「俺達はその前に卒業するだろうけれど、後輩が大変じゃないのかい?」
「まあ、それは私達が実際に接してみて判断することだと思うわ。
おっと、誠はほどほどにね。浮気とかされると困るし」
「へいへい……」
「じゃあ、誠も西園寺も頑張れよ!俺も桂さんのようないい女を彼女にして、それから、ふふふ……」
親友はいやらしい笑みを浮かべながら教室を出ていく。
「おい、あまり羽目は外すなよ、泰介!」
誠が忠告するが、泰介は全く聞かずに出て行ってしまう。
あのお調子者、相手の繊細な心が読めるのかどうか。相手が嫌がることも平気でやってのけないか? まあ自分の言えた義理じゃないが。
「桂、か……」
誠がつぶやくと、世界が眉をひそめ、
「桂さんとは、わかれたんじゃないの? あの人と付き合ってないなら、いいでしょ、私と付き合っても」
「あ、ああ……」
とりあえず生返事をする誠。
かつて誠は世界の仲介で、『桂言葉』という少女とつき合ったことがあった。
しかし引っ込み思案で寡黙で、触れ合うことを極度に嫌がる彼女とは、いつの間にかすれ違いが出来ていた。
「俺たち、距離を置いた方がいいんじゃないかな。しばらく頭の中を整理すれば、いつかは……」
これを最後に、誠は言葉と一切話していない。
その後世界が自分に告白。言葉を紹介したのも誠を思いやってのことだったという。
自分も世界のことが前々から好きだった、との思いがあったこともある。彼は世界と付き合うことになった。
とはいえ、
(仲直りした方がいいかな。でも世界がどう思うかな)
あいまいな態度のままに距離を置いてしまった言葉のことを気にしつつ、誠は放課後ティータイムの曲目を調べてみた。
『カレーのちライス』、『私の恋はホッチキス』、『ふでぺん 〜ボールペン〜』。
「……なんかシュールだけど、どこをどう突っ込んだらいいかわからんな……。ま、聞いてみるか」
誰にも聞こえないように、つぶやいた。
帰りがけ、誠は世界の目を盗んで、言葉がいる4組をのぞいてみるが、言葉は
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