第1部:学祭前
第1話『交錯』
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るかもしれないわよ」
『彼氏』と聞いて、何のたわけた想像をしたのか、律がやらしく笑んでから立ち上がって叫んだ。
「よーし、じゃあライブが終わったら、みんなでナンパだ!!」
……が、誰も盛り上がらない。
「か〜んべ〜んしてくれえ……」
澪はさらにげんなり。
「遠慮しときます」
梓もあっさり拒否。
「……誰か1人ぐらい『いえーい』と言えよ……」
テンションダウンした律に、ムギが優しく声をかけてきた。
「りっちゃん、『ナンパ』は男が誘うときに使う言葉で、女が誘うときは『逆ナンパ』って言うのよ」
「つっこむところちげえよ……それにどっちだって同じだろ……」
唯は少し考え込む。
彼女も年頃。一目ぼれする男子やアイドルがいないわけではない。
けれども男っ気のない桜ヶ丘高校、たまに会ってもすぐに顔を忘れてしまう。
ただ、行きつけのコンビニでたまに会う人、その人の顔だけは覚えている。
女を引き付ける妙な魔力。
言葉で表すならこうだろうか。そんな顔をした男子だった。
「あ、唯。おまえは賛成してくれるな。一緒にナンパしようぜ」
律が唯の肩を叩いてくる。
「いいかもね。いえーい!」
考え事で聞いていなかったのをごまかし、唯は叫んだ。
「はいはい。さ、そろそろ練習しないと。本番で恥をかいちゃいますよ!」
梓が立ち上がって自分のギターをとる。
「えーっ、まだ早いよ。もう少しお菓子食べようよ」
と、唯は乗り気でない。
「これでも遅い方ですよ!もう四時じゃないですか!!」
梓にどやされ、唯は渋々練習の準備を始める。
律は本当に彼氏を作りたいと思っているようだが、唯はまだ実感がわかず、恋する思いもすぐにしぼんだ。
「放課後ティータイム?」
伊藤誠がクラスメイトの西園寺世界から軽音部のことを聞かされたのは、昼休み、教室で食事をしている時のこと。
「ええ、桜ヶ丘高校の人たちがこの学園祭に来るでしょ?軽音部の演奏、私と一緒に聞きにいかない?」
世界はアホ毛を一本垂らしたセミロングヘアーを振りながらうきうきとしている。彼女はどうやら軽音部のきゃぴきゃぴした曲風が好きらしい。
もともとハキハキしたクラスのムードメーカー。そっちの曲の方が彼女の気質にも合っているのだろう。榊野には軽音部がないからなおさら。
「あ、ああ……3時頃なら俺もあいているからな」
「やった、じゃあ2時50分に中庭ね、誠!」
実を言うと軽音楽は、誠はあまり興味がない。ともあれ、彼女の頼みとあらば、断るわけにもいくまい。
もともと流されやすく優柔不断な性格。頼まれるとあまり断れないのだ。
「桜ヶ丘って女子高だろ。どんな子達なんだろうなあ、生徒たちって」
そう言って横から首を突っ込んできたのは、誠の親友。
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