第十六章
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をかける。
「私をどうやって倒すつもりなのだ?」
「こうしてだ」
役は一言言うと右腕を振った。そしてそこから剣を出した。
「退魔の剣か」
「唯の退魔の剣ではない」
役はそう言い返した。
「これは炎の剣だ」
刀身を青い炎が包み込んだ。青い光がその場を支配した。
「これで貴様を滅ぼす」
「どうやら私が思っている以上だな、貴様は」
アルノルトはそれを見て呟いた。
「これはさらに面白くなってきた」
陰惨な笑みを浮かべた。それは戦いを楽しむ笑みではなかった。
「それでは私も本気を出させてもらおう」
動きながら髪を抜いた。そしてそれで槍を作る。
「これでな」
「望むところ」
役が間合いに入った。そして剣を突いてきた。
「フン」
だがアルノルトはそれをかわした。そして逆に槍を突き返す。
「剣捌きもよいな」
「おかげでな。貴様等の同胞を数多く相手にしてきたのでな」
「我等が同胞をか」
「そうだ。貴様も今ここでその一人となる。覚悟しろ」
そして剣を再び突き立てた。それでアルノルトの胸を貫いた。
筈であった。だが彼の姿は消えていた。
「ムッ」
「フフフフフ」
離れた場所から彼の笑い声が聞こえてきた。
「甘いな。まだ私のことを完全に理解してはいないようだ」
「貴様・・・・・・。消えたか」
「少し違う」
声は次第に遠のいていた。
「場所を変えただけだ。ここで戦うのも飽きたのでな」
「飽きただと」
「そうだ。だからこそ場所を変えるのだ」
アルノルトの声はそれに答えた。そしてその声も消えていった。
役はその気配を探り続けていた。そして声のした方へ顔をやった。
「そこか」
彼はそこの気配に気付いた。そしてそちらへ向けて歩きはじめた。
既にパレスの周りは赤い血と紙で汚れていた。彼等の戦いの後であった。だがそれはすぐに消え去った。
一陣の風が吹いたのであった。その風が全てを吹き去った。そして後には何も残ってはいなかった。
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