第十六章
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それを見て考える目をした。
「それで私を焼き殺すつもりだな」
「だとすればどうする」
「面白いことを考えたな」
「まだ余裕があるか」
吸血鬼、いや闇の世界の住人にとって炎は不倶戴天の敵である。炎には邪悪なるものを滅ぼす力があるのだ。仏教の不動明王が炎を司っているのもそれである。明王の中で最も強大な力を持つとされるこの明王はその炎によりあらゆる邪悪な存在を調伏すると言われているのだ。
「炎を前にして」
「みくびってもらっては困るな」
アルノルトはそれに対して言った。
「この程度の炎で私を倒せると思われては困るのだ」
そう言いながらまたもや血を垂らしてきた。そして今度は蛇達を出してきた。
「蛇か」
「そうだ」
アルノルトは答えた。
「蛇は本質的に水を好む。この意味がわかるな」
「・・・・・・・・・」
「水は火に克つ。そう言われているのは東洋だけではない」
中国の五行思想においては水は火に克つと言われている。だがそれは欧州においても同じである。
錬金術は中国の五行思想である火金水木土に対して地水火風の四つである。そしてそれぞれの属性を持っている。
その中で水は火に克つとされているのである。水が火を消すことからきているのは言うまでもない。
「それは知っているな」
「ふん」
役はそれに答えようとはしなかった。
「これでその狐達は怖くはない」
だがそれでも狐達はアルノルトを見据えて唸り声をあげていた。彼等は魂を持たぬ存在である為か怖れは知らなかったのである。
「後は貴様だけだな」
「もう一つ札を出すか」
「まだあるというのか」
「そうだ」
彼はそう言うと今度は青い札を出してきた。そしてそれを投げた。するとそこから人面獣身の存在が出て来た。
「ホウコウという」
役は言った。
「本来は木から生じるものだ。木の属性を持つ」
「それで私の蛇を相殺するつもりだな」
「そうだ」
役は答えた。
「これで狼も蛇も恐れることはない」
「そうだな。だが私はどうするつもりだ?」
アルノルトは問うてきた。
「貴様か」
「そうだ。まさか私を倒すのが目的ではないとは言わないだろう」
「無論」
役はそれに答えた。
「私がここにいるのは貴様を滅ぼす為なのだからな。だからこそ式神を用意してきたのだ」
「だがその式神も私の僕達の相手にしかならないな。私には指一本触れることはできぬ。それでどうするつもりなのだ?」
「まだ手はある」
役は昂然と言った。
「貴様を倒す手はな。今それを見せよう」
「ほう」
役は横に動いた。同時に式神と僕達の戦いがはじまった。役とアルノルトはその中互いに動きはじめたのであった。
「さて、人間よ」
アルノルトはまるで影の様な動きで地面を滑りながら役に声
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