第十五章
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「私は今ここにいる。だが姿が見えないのを不思議に思っているのだろう。違うか」
「・・・・・・・・・」
答えなかった。だがそれは肯定の印であった。しかし頷きもしなかった。
「答えぬか。だがそれでもよい」
彼は悠然とそう言った。
「どちらにしろ私は獲物の前には姿を現わす主義なのでな」
「私を獲物というか」
「如何にも」
彼は答えた。
「それ以外に何だというのだ」
すると地からアルノルトが顔を出してきた。その整った顔が地に浮き出てきた。
「人間は。私の糧となるだけの存在なのだからな」
顔が上がり頭が出て来た。そこからゆっくりと彼の上半身が出て来た。昨夜の黒づくめの服であった。
そして身体全体が出て来た。彼はその場所に立った。
「違うというのか」
「それを貴様に言っても無駄だろう」
役はそう言葉を返した。
「どのみち人間の言葉なぞ聞く気もないだろうからな」
「フ、その通りだ」
アルノルトはそれを認めた。
「何故糧の言うことなぞ聞く必要があるというのだ」
「では言わなくてもよいな」
役はそう言いながら懐から銃を出してきた。
「貴様への冥福の言葉だ」
「生憎冥府は我々夜の住人達の世界」
アルノルトは嘯いた。
「そう言われることもない」
「そうか。ならば」
銃を構えた。
「ここで死ね」
そして銃を放った。それでアルノルトを撃った。だが彼はそれを悠然と見ていた。
「またあの銀の弾か」
彼はにこやかに笑っていた。
「それは通用しないとわかっている筈だが」
赤い髪が伸びた。そして彼の前を覆った。
それで弾を弾いた。銃弾が虚しく下に落ちた。
「この通りな。私の髪は何ものをも通しはしない」
「それもユダの力か」
「そうだ」
彼は答えた。
「わかっていたのではないのか」
「そうだな。では」
今度はコートのポケットから数枚の札を取り出した。
「これならどうだ」
「むっ!?」
アルノルトはそれに目を向けた。それは紙の札であった。そこに何かしらの文字が書かれていた。アルノルトの知らない文字であった。
「それは」
「すぐにわかる」
役はそう言ってそれをアルノルトにめがけ投げた。札はすぐに白い鳥となった。
「鳥!?」
鳥はそれぞれに別れアルノルトに向かってきた。彼に襲い掛からんとしていた。
「これは」
「式神だ」
役は言った。
「我が国の陰陽道に術の一つだ。それは知っているか」
「知らんな」
彼はそう答えた。
「この手品が一体どうしたというのだ」
「生憎だが手品ではない」
役はそう言葉を返した。
「これは術なのだ」
「術!?」
「そうだ」
役は言った。
「貴様等異形の者達を滅ぼす術だ。さあ受けてみろ」
そしてまた札を
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