第十三章
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「ふふふ、察しがいいな」
それはあの男の声であった。アルノルトは霧から人の姿になったのであった。
「どうやらよく眠ったようだな。血の気がいい」
彼は本郷と役を見てそう言った。
「それでこそ狩りがいがあるというものだ」
「言ってくれるな」
本郷は刀を構えながら言葉を返した。
「わざわざそちらから出向いてくれるとは思わなかったがな」
「挨拶に来たのだ」
アルノルトはそれに対して素っ気なくそう答えた。
「挨拶!?」
「そうだ。今度会う場所を決めておきたくてな。それを伝えに来たのだ」
「勝手なことを言ってくれる」
役が言った。
「貴様等にそれを決める権利があるというのか」
「それがあるのだよ」
アルノルトは血の香りがする笑みを浮かべてそう答えた。
「何!?」
「私はまた食事をとる。それでわかるな」
「クッ」
二人はそれを聞いて思わず呻いた。
「わかったようだな。では言おう」
彼はその赤い目を二人に向けながら言う。その目の色はまさに血の色そのものであった。
「城だ。これだけ言えばわかるか」
「城!?」
「そうだ。詳しいことはそこの者達にでも聞くのだな」
そう言いながら周りの警官達を指差して言った。
「その者達の方がよく知っているだろうからな。それではだ」
彼は一呼吸置いた。
「去ろう。これで用件は済んだ」
「待て」
本郷は去ろうとするアルノルトを呼び止めた。
「このまま帰るつもりか」
「如何にも」
彼は答えた。
「それがどうかしたのか」
「無事に帰れると思っているのか」
アルノルトを見据えて言う。
「俺達の前にノコノコと姿を現わしてきて」
「無論だ」
彼は言った。
「何なら私を斬ってみるがいい。その細い刀でな」
そして本郷を見て笑いながらそう言った。
「どうだ。できるか」
「死にたいらしいな」
「生憎だが私は決して死ぬことはない」
彼はまた笑った。
「我等はな。この世がある限り生き続けるのだ。それが我等闇の世界の者達が偉大である何よりの証」
「言ってくれるな。ならば」
本郷は刀を居合いで構えた。
「死ねっ!」
刀を横に一閃させた。白い光が横切る。それでアルノルトの首を断ち切った。筈であった。
だが彼の首は落ちてはいなかった。そのかわりに首のあった場所が一筋消えていた。それだけであった。
「なっ!?」
「ふふふ」
驚く本郷達を見て笑っていた。
「どうやら私を甘く見ているようだな、まだ」
そして余裕に満ちた声でそう言った。
「どういうことだ」
「夜のことを忘れたのか。私は身体を分けることができる」
「クッ」
「それだ。だが今は少しあの時とは違うのだ」
「どういうことだ」
「今の私は幻影なのだよ。これも
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