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ドラクエX主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
二部:絶世傾世イケメン美女青年期
九十話:神の塔の幻影
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寄ろうとしたところで。
 幸せそうに抱き合った二人の姿が、掻き消えました。

 消えてしまったことで我に返り、守ると言った側から離れてどうすると、踏み留まって。
 でも振り返ったり、仲間に声をかけたりはできなくて、その場に立ち尽くして俯きます。

 ……あんな顔、してたんだ。
 一瞬しか、見えなかったけど。
 私に、ドーラに、似てただろうか。

 ……あんなに幸せそうに、笑うんだ。
 ママンだけでなく、パパンのあんな顔も。
 見たこと、無かった。

「……ドーラ」
「……ドーラさん?」

 背後に歩み寄るヘンリーと、立ち尽くして戸惑うマリアさんの気配。
 他のみんなに目立った動きは無いけど、きっとみんな困ってる。

 ……よし、大丈夫。
 もう、大丈夫。

 気合いを入れて振り返ろうとしたところで、ヘンリーに後ろから抱きすくめられます。

「……ヘンリー?……大丈夫だから、離して」

 今、気合いを入れたところなのに。
 特に今は、マリアさんもいるんだし。

「……本当に?大丈夫か?」
「うん。勿論」

 むしろこのままでいられるほうが大丈夫じゃなくなるから、早く離せ。

 断言したのにまだ離そうとしないヘンリーの腕を、強引に振りほどきます。

 ヘンリーが溜め息を吐き、マリアさんが呟きます。

「……神の塔は、魂の記憶が宿る場所とも言われているそうです。そのために、全てを見通す不思議な鏡が祀られる場所とされたとか。……今の幻影も、もしや誰かの……」

 誰かの。

 ここにいない誰かなら、きっと死んでしまったパパンか、もっと他の誰かの。

 ここにいる誰かなら、私の。
 魂の、記憶か。
 それなら、まともに見たことも無いママンの顔が見られても、おかしくは無いのか。
 パパンの、あんな表情も。
 私の記憶には無くても、居合わせた魂が、記憶してるかもしれないのか。

 ……前世のことは、どうなんだろう。
 出てこなかったなら、もう消えてるのか。
 弱いから、出てこないだけなのか。

 人も魔物もこんなにいるのに、私のあの記憶だけが出てきたんだとしたら。
 私じゃない他の誰かの記憶だとしても、いくつも宿った中からあれが選び出されて、現れたんだとしたら。
 それほど私があの記憶に、あの二人に。
 こだわってるのか。

 ……うん、こだわってる。
 あの二人を助けるためなら、他のことはどうでもいい、とは言わないけど。
 優先順位で言ったら、比べ物にならない。

 あの二人を助けるために、他の誰かをはっきり見捨てるとか、犠牲にするなんてことは無くても。

 振り捨てなければ進めないなら、全てを振り捨てても、私は進む。
 私の足を止めてし
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