第十一章
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は妖怪退治も同じなわけです」
本郷もその茶を飲みながらここでこう述べた。
「それもですか」
「ええ」
本郷は答えた。
「俺もね、最初は苦労したものですよ」
「そうか。それ程苦労していたようには見えなかったが」
役がそれを聞いて言う。
「君はあの頃からかなりのものだったが」
「いえそうじゃなかったですよ」
笑いながらそう返す。
「鬼とか天狗とか。あんなのはじめて見ましたし」
「鬼や天狗とも戦ったことがあるんですか」
警官の一人がそれを聞いてそう声をあげた。
「はい。最初は鬼と戦いました」
本郷はそう答えた。
「京都でね。あそこはそうした話が多いんですよ」
「橋の下にいる鬼でした」
役が答えた。
「一条戻橋の鬼みたいな奴ですか」
「簡単に言うとそうですね」
「橋の下にいてね。そっからでっかい手を伸ばして襲い掛かるんですよ」
「はあ。手で」
「そうです。こんな感じでね」
身振り手振りを交えながら説明をはじめた。
「下から。こう橋の上にいる人めがけて伸ばしてきて」
「そして捕まえて食べてしまうと」
「その通りです」
役が言った。
「本郷君の初仕事でしたけれどね。彼は上手くやりましたよ」
「どうしたんですか?」
「まずはその手をばっさり」
彼は刀を横に一閃させる身振りをしながら言う。
「ばっさりと」
「はい。手首をね。一気に切ってやりましたよ。そうしたら三本指の巨大な手首が橋に落ちて来ましてね」
鬼の指は三本となっている。これは鬼の持つ三つの不徳を表していると言われている。人間は五本指であるがこれは二つの徳でその三つの不徳を抑えている為だと言われている。
「そうしたら橋の下から物凄い叫び声が聞こえてきました」
「鬼のやつですね」
「はい」
「そしてどうなりました」
「そこからがね。さらに凄かったんですよ」
役が言った。
「橋の下からその手首の主が出て来ましてね。本郷君に襲い掛かってきたのですよ。巨大な赤鬼が」
「赤鬼が」
「ええ。角を生やしていて。それで残ったもう一方の手で俺に襲い掛かってきたんですよ」
「それで」
話を急かす。
「勝ったんですよね」
「ええ、まあ」
本郷は答えた。
「そうじゃなきゃこの仕事今も続けていませんから」
「そこで死んでいたでしょうね、負けていると」
役はきっぱりと言った。
「死んでいたんですか」
「ええ」
「この仕事は負けたら終わりなんですよ。負けたらそれで怪物の餌です」
「厳しいですね」
「いえ、それがリスクってやつですから」
本郷はあっさりと笑いながらそう応えた。
「どの仕事にもリスクはありますから。たまたまきついリスクなだけです」
「そうですかね。何か私等よりきついですけれど」
「あ
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