第四十話 抜いた以上容赦はしない
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、一体何を考えての沈黙なのか……。
司令室の空気が一気に重くなった。皆が険しい表情で周囲を見渡している。罠に嵌ったのではないのか、そう思っているのだろう。
『……出来るのか、あれは無双の戦上手だが』
『降伏して要塞内に招き入れます、そこでなら可能でしょう。ヴァレンシュタイン元帥は例の事故で身体を動かすのに支障が有るようです。成算は十二分に有ります』
痛いほどに皆が張りつめている。今此処で誰かが我々を襲うかもしれない、そう思うと心臓が押し潰されそうな圧迫感を感じた。
『……ブラウンシュバイク公爵家とリッテンハイム侯爵家は廃絶する、それは動かせぬ。だが事成就の暁には二年を目処に両家の再興を許す』
『おお』
裏切ったか、リヒテンラーデ侯……。
『……しくじるなよ』
『有難うございます、必ずやヴァレンシュタイン元帥を』
『うむ』
声が途切れた、どうやら終わったらしい。
「殺しなさい! ヴァレンシュタインを殺すのです! アンスバッハ、シュトライト!」
声を上げたのはリッテンハイム侯爵夫人だった。だがアンスバッハ、シュトライト准将は無言で動こうとしない。
「アンスバッハ、シュトライト!」
「それは出来ません!」
尚も司令長官を殺す事を命じる侯爵夫人の声をシュトライト准将の強い声が討ち消した。唖然とする侯爵夫人にシュトライト准将が言葉を続けた。
「リヒテンラーデ侯に貴女様達の運命を委ねる事は危険です。もしそうなればリヒテンラーデ侯は必ずエリザベート様、サビーネ様に御自身の一族から配偶者を押し付けるでしょう。御二方は子を産む道具として扱われるだけです。そうする事で皇家の血をリヒテンラーデ一門で囲い込む。宮廷政治家であるリヒテンラーデ侯にとっては皇帝と密接に繋がる事こそが権力を維持する手段だからです」
「……」
「万一、エルウィン・ヨーゼフ二世陛下が邪魔になった時には陛下を廃し、自らが権力を維持するためにエリザベート様、サビーネ様が御産みになった御子を皇位に就けようとするでしょう。その後は、エリザベート様もサビーネ様も用済み、いや邪魔者でしか有りません。御二方が御子を利用して権力を振るう事を防ぐために厳しい監視下に置かれる、或いは御命を奪われるという事も有りえます」
「……そんな、馬鹿な」
喘ぐような侯爵夫人の声に今度はアンスバッハ准将が首を振りながら答えた。
「クリスティーネ様、貴女様がリッテンハイム侯爵家で重んじられたのは先帝陛下が後ろ盾しておられたからです。残念ですがエリザベート様、サビーネ様にはそのような方はおられません。となればシュトライト准将の言うようにその御身体に流れる血のみを必要とされる事になりましょう」
「……」
二人の少女が怯えた様な表情を見せた。そして黙り込むリッテンハイム侯
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