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港町の闇
第十章
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考えとかなり違うな、と思いまして」
「それについてですか」
 彼はそれを聞いて何かに気付いたようであった。
「それについてはお話すれば長くなりますが。宜しいでしょうか」
「ええ、まあ」
 巡査はそれに同意した。
「それでは明日」
「明日ですか」
「今日は遅いですからね。それに戦いの後ですし」
 役は言った。
「身体を休めたいので。宜しいでしょうか」
「はあ」
 巡査はそれにも同意した。
「それでしたら。では明日署で」
「はい」
 こうして彼等は休息に入ることにした。関帝廟を出ようとする。
「おっと」
 ここで七尾刑事が携帯の電話を入れた。
「戦いが終わって全てが終わりというわけではありませんよ」
「あっ」
 本郷も役もそこで気付いた。
「そうでしたね。迂闊でした」
「はい」
 大森巡査も他の警官達も既に動いていた。そして刑事の電話に応えてパトカー等がやって来た。そして哀れな犠牲者の亡骸を取り囲んだ。
「まだこれからっていう若い娘を」
 その亡骸を見て刑事は忌々しげに呟いた。
「何て野郎だ」
「ええ」
 本郷と役はそれに同意した。彼等もそこに立ち会っていた。
 だが事件の真相は言うわけにはいかなかった。これはあくまで『普通の』事件であることになっているからであった。少なくとも表立ってはそうである。そういうことにしなければならないのだ。
「何としても倒さねいといけませんね」
「ああ」
 役は本郷の言葉に頷いた。
「どれだけ手強くてもな。方法はある」
「あるんですか」
「陥落しない城はないって言うな」
「はい」
「そういうことだ。本当に不死身の存在も無敵の存在もこの世にはありはしない」
 彼は強い声でそう呟いた。
「だからこそだ。必ず倒す方法はある」
「ですね」
 それに本郷も頷いた。
「じゃあ行きますか。その時は」
「ああ。頼むぞ」
 役は亡骸を見ていた。見ながら本郷に対して言った。
「彼女、いやあの男の毒牙にかかった多くの罪なき人達の為にもな」
「はい」
「必ず倒す。いいな」
 最後に強い声が暗闇の中に響いた。そして彼等は目の前にいる亡骸をただ見つめるのであった。それから休息に入った。だがその休息は戦いの合間のほんの息抜きに過ぎなかった。

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