第一章
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はどうでますかね」
「検死か」
刑事はそれを聞いて少し目の色を変えた。シニカルなものであった。
「それは表の検死か、それとも本当の意味での検死か」
「本当の意味で、です」
若い警官の答えはそれであった。
「だろうな。そう答えると思っていたさ」
刑事にもそれはわかっていた。
「原因不明さ、こういった事件のいつものパターンだ」
「ですね」
少年の目にはもう生気がなかった。だがカッと見開かれたその目は何かを見ていた。恐怖に凍ったその目に映るものは一体何であろうか。
そこには今夜の空が映っている。漆黒のその空には雲も星も月もない。ただ暗黒だけが広がっている。だが彼はその暗黒を見てはいない。暗黒の世界に棲む者達を見たのであろうが。
「これで三件だ。もう充分だろう。俺達の手には負えそうにもない」
「残念なことですけれどね」
「人を呼ぶか。明日朝一で電話をかけるぞ」
「ゴーストバスターズですか?」
「近いが日本にはゴーストバスターズはいない」
「じゃあ陰陽師でも」
「古いな。だがその通りだ」
「では京都に」
「ああ。あの二人を呼んでくれ。いいな」
「わかりました」
検死官が来た。そして遺体を詳しく見はじめる。赤いランプが辺りを照らす。彼等はその中に立っていた。その赤い光がまるで死者の魂のように見えた。
事件の翌日神戸駅に二人の若者が姿を現わした。一人は精悍な顔立ちの若者であった。黒く硬い質の髪を短く刈り込んでおりジーンズにジャケットとラフな服装をしている。そして背には何か細長いものを背負っていた。
もう一人は茶色の髪を少し伸ばした整った顔立ちの青年であった。若者より少し年上のようである。細面の美男子であり気品すら漂っている。黒いスーツとを着こなしその手には特に何も持ってはいない。二人は駅の改札口をくぐりその向こうに出た。
「何か神戸はあっという間でしたね」
若者がまず口を開いた。
「いつもこんな近い場所だったらいいんですけれど」
「そうそう上手くはいかないさ」
青年がそれに応えた。
「私達の仕事はね。それは君もわかってることだろう」
「ええまあ」
若者は青年のその言葉に頷いた。
「おかげであちこち飛び回っていますからね」
「そういうことさ」
青年はそれを聞いてから言った。
「それが仕事というものだよ。いいか悪いかは別にして」
「俺にとっちゃいいことですかね」
「それはどうしてだい?」
青年は問うた。
「い、いや。旅行もできるし。美味いもんも食べられるし」
「君はまたそれなのかい」
それを聞いて少し呆れた顔になった。
「他には何かないのかい?」
「京都の食べ物は口に合わないですから。俺には」
彼は不平そうにそう述べた。
「味がないし。高い店ばっかりだし」
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