第百四十話 妻としてその八
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信長は彼等が動いたことを聞いてすぐに竹中に言った。
「御主の読み通りじゃな」
「はい、長政殿は一本気な方、それにです」
「家臣達を見捨てる者ではないな」
「そうです、こうした場合間違いなく家臣を救いに赴かれます」
長政のその性格を知っての動きだったのだ。
「そこで、です」
「あえて退いてじゃな」
「姉川に誘い出しましょう」
「ではな、今から」
「はい、もう少し近寄り」
城にだ、そうしてだというのだ。
「姉川まで退きましょう」
「そして南に入りな」
姉川の南にだというのだ。
「布陣するぞ」
「はい、それでは」
こう話してそうしてだった、織田家と徳川家の軍勢は一旦城まで近付きすぐに引き返した。
その動きを見てだ、長政はまずはいぶかしんだ。
そのうえでだ、家臣達にこう言った。
「おびき出そうとしているのか」
「そうやも知れませんな」
「織田家が望む戦の場に」
「ぞうじゃな、有り得る」
長政は家臣達の話を聞いて己の読みを間違いないとした、そうしてだった。
ここは慎重に進もうとした、だが。
今度は朝倉家の者達だった、彼等が動いたのだ。
織田軍、徳川軍の動きを見てそのうえで彼等を追いにかかった、朝倉家を率いる諸将はここぞとばかりに朝倉の兵達に告げた。
「よいか、追うぞ」
「織田家の軍勢の後ろを攻めよ」
「金ヶ崎では逃したが今度は逃すな」
「よいな、何としても追いつけ」
「そしてあの者達を倒すのだ」
こう命じてだった、そうして。
彼等は織田家を追う、それを見てだった。
浅井家の者達は驚いてだ、長政に対して言った。
「殿、朝倉殿の軍は追いはじめています」
「織田家の軍勢の後ろに迫ろうとしています」
「このままでは朝倉殿の軍勢だけが突出してしまいます」
そうなれば若し織田家の軍勢が反転して襲い掛かれば朝倉家の軍勢は叩かれてしまう、それではだった。
「朝倉殿の軍勢が倒されれば」
「我等だけで織田家、徳川家を相手にすることになります」
「一万と少しの軍勢で我々が戦うことは」
「どうにも」
「朝倉殿の軍勢を放ってはおけぬ」
とてもだとだ、長政も言った。
それで彼は察しながらも朝倉家の軍勢と行動を共にした、彼等を倒される訳にはいかなかったからだ。
浅井朝倉の軍勢合わせて三万は織田徳川今は十二万の大軍を追って南下した、織田家の後詰は本来の後詰役である佐久間だった。
佐久間は後ろの朝倉の軍勢を見てだ、こう言った。
「遅いのう」
「ですな、具足が重いですし」
「足並みも整っておりませぬ」
今は佐久間の下にいる高山と中川清秀が応える。
「しかも率いる者の采配が思わしくないですな」
「ばらばらな感じです」
「やはり宗滴殿でなければな」
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