第二部 文化祭
第41話 知りたい
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を、正直とても魅力的に感じた。
「……で、解る問題を解らないフリして俺に訊いてみたと?」
アスナは黙ってこくりと頷く。
「……ぷっ」
「何よ、笑うことないでしょ! ……ま、実際変なことしたもんね。いいよ、笑っても」
そう言い、ぷいっと顔を逸らした。
「いや、閃光様にも可愛らしいところがあるんだなぁと」
「な、なによそれ! ていうか、今更すぎるわよ!」
「だってさ、知り合ったばかりの頃は、なんかこう……怖いというか……傍にいるだけで刺されそうというかだったし」
「い・ま、刺しましょうか?」
「遠慮しときます」
「そうした方が身のためね」
アスナは目の前の机に向き直り、シャーペンを握った。機能性がいいと評判のシャーペンで、色は白だ。
「どうしたの、キリト君? わたしのペンを見つめても、なんにもないよ?」
アスナが首を傾げて言う。
「えっと、そのペンいいなぁと思って」
「そう?」
「ああ。疲れにくそうだし、白ってアスナっぽいし」
「そ。じゃああげるわよ」
別に欲しがっているわけではないのだが、アスナがこちらにペンをつき出してくる。
「……いや別に欲しいってわけじゃ、とか思ってるんでしょう?」
ペンを引っ込めたアスナが、淡々とした口調で言う。
初めて出会った頃と比べ、彼女はとても明るくなった。しかし時々、あの頃のように──もしかするとあの頃以上に暗い光が、彼女の瞳を過るのだ。
「だ、だってさ、これアスナのだし……そんな簡単に頂くわけにはいかないだろ」
「構わないわよ。これ買ってきたの、母さんだし」
母親の話をする時のアスナは、なんだかいつもおかしい。
「お母さんのこと、嫌いなのか?」
訊いてみると、アスナは強く首を横に振った。
「じゃあ、なんで……」
「どうだっていいわよ、そんなこと。さ、宿題の続きしよ」
「あ、ああ……」
俺とアスナは、付き合っている。
しかし、俺はアスナのことをなにも分かっちゃいない。
アスナの抱く暗いなにかを、俺は知りたいと思った。
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