第二部 文化祭
第41話 知りたい
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アスナと付き合い始めてから、早一週間。
?閃光?結城明日奈は、容姿端麗眉目秀麗成績優秀の美少女なので、この学園のアイドル的存在。そんな彼女に恋人ができ、しかも相手は俺、桐ヶ谷和人──なんてことがバレてしまえば、俺の命が危ない。
というわけで、アスナと付き合っている事実について、友人以外には伏せてある。アスナもそれを承認してくれている。
──はずなのだが。
「キリトくーん!」
アスナが手を振り、こちらへ駆け寄ってくる。
何故だか俺の背後に突き刺さる冷たい視線。
無論、愛ではない。むしろ殺意。しかしアスナはそんなことなど露知らず、陽だまりのような笑みをたたえている。
「や、やあアスナ……」
「なんでそんなにぎこちないのよう」
ぷくっと片頬を膨らませ、上目遣いで言う。
「何よ。わたしとの関係がバレちゃ困るとか、そういうの?」
俺は仕方なく頷く。アスナは溜め息を吐いた。
「以前だって、君を呼びながら駆け寄るくらいのことはしてたわよ。気にしすぎなのよキリト君は」
「言ったってさぁ……」
「君こそ、そんなこと気にしてたって始まらないわよ。ほら、早く行きましょう」
「う、うーむ……」
*
「うーん……」
「どうしたんだ、アスナ? なんか悩んでるっぽいけど」
図書室。
一番奥の、一番端の席に座る俺の横の椅子に、アスナがちょこんと腰かけている。広げている宿題の問題集とにらめっこをする顔は、なにやら悩ましそうだ。
「……ここの問題が解らなくて」
アスナが、冊子の一点をちょんちょんとつつく。
並んでいるのは一見複雑そうな数式だったのだが、まとめてしまえば然程難しいものではない。アスナなら余裕で解けるだろうに、と思いながら、俺は小首を傾げた。
「これなら……こうじゃないか?」
「そ、そうだね。ありがとうキリト君」
そう言って微笑む彼女に、俺は訊ねた。
「この問題、本当に解けないのか? ……気を悪くしないでほしいんだけど、アスナなら普通に解けるのではないかと思うのですが」
瞬間、何故だかアスナの頬が赤く染まった。
俺は焦り、早口で言う。
「ご、ごめん! だ、誰にだって解らないものくらいあるよな、うん」
「……本当は、解ってるよ」
「えっ……じゃあ、なんで」
「せっかく君と付き合ってるのに、恋人らしいことできてないじゃない?」
言われてみれば、できていない。アスナからデートのお誘いを頂いては、なにかと理由をつけて逃げ出してしまっている。
「だからね……なんて言うのかな、せめて“当たり前の幸せ”を大切にしようって思ったの。いつも色々慌ただしいから、こういうのもいいかなぁって」
照れながら言うアスナ
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