第十六章
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第十六章
「ここから見える景色がですね」
「そんなにいいんですか」
「美しいユトレヒトの街が全て見渡せます」
胸を張って誇らしげに宣言する。
「ここから」
「そうみたいですね」
しかしそれを聞く本郷の今の言葉は冷ややかなものだった。
「どうやら」
「おや、あまり嬉しくはないのですか」
「見えないですからね」
今度は残念そうな声を出した。
「今は」
「まあそれはそうですね」
そして警視正も苦笑いを浮かべてそのことを認めるのだった。
「夜ですからね」
「夜景は見えますけれどね」
それは確かに見えた。白い無数の光がそこに見える。ユトレヒトの夜は見事なまでに輝いていたのだった。
「それはいいですけれど」
「そう、夜景だ」
ここでまた役が言ってきた。
「夜景だな」
「夜景に何かあるんですか?」
「下を見てくれ」
彼はここで下のある場所を指差したのだった。
「あれをな」
「あれ!?」
「あれといいますと」
「そう、あれだ」
そこを指差しながら言葉を続ける。
「あれを見てくれ。よくな」
「あれは」
「あそこに」
ここで二人は気付いたのだった。そこに何がいるんのか。
夜の街の光が時折消えていく。そしてまたすぐに出て来る。まるで何かが通り過ぎたかのように。そう、明らかにそこを通り過ぎていたのである。
「あそこにいますね」
「わかったな」
「ええ、よく」
本郷は役に対して頷いたのだった。
「見えますよ。あそこにいますね」
「わかったな。それではだ」
「はい、仕掛けます」
ここから出される答えはもう決まっていた。
「あの魔物に」
「それではだ。行くぞ」
役はもうその手に札を出していた。あの茶色の札をだ。
すぐに塔の外に向かって投げる。それと共に二人はその塔の外に飛び出た。背中にその札が変わった翼が付く。そうしてそれを羽ばたかせ飛ぶのだった。
飛びながらその光を消す何かに襲い掛かる。まずは本郷が動いた。
「じゃあやりますね」
「頼む」
「確かに夜の中じゃ見えないけれどな」
本郷は右手にあの小刀を数本出しながら言っていた。
「ここからじゃわかるぜ。よくな!」
その光を消すものに対して小刀を投げた。それは見事に突き刺さったのか鈍い音を立てる。本郷はその音を聞いてにやりと笑った。
「まずは一撃ですね」
「そうだな。しかしだ」
役は飛びながら本郷に対して告げてきた。
「これでわかったな」
「はい、俺達のことが」
無論それをわかっての攻撃であった。
「はっきりとわかりましたね。これで」
「さて、来るぞ」
魔物が来るのが見えていた。本郷の目には。
下からそのまま急降下して来る。気配はないが。彼はそれを見て隣を飛ぶ役に対して
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