第十四章
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第十四章
「それはな」
「じゃあ何で光は使わないっていうんですか?」
仕事をする人間の立場からの問いであった。
「それで。どうするんですか」
「元々光をそのまま使うつもりはなかった」
だが役はここでこう言うのだった。
「それはな」
「光を使わない!?」
「いや、使う」
使わないと問われれば使うと言う役だった。
「光はな」
「言っている意味がよくわからないんですけれどね」
「光は白だ」
役はまた言ってきた。
「そして闇は黒だな」
「それで夜も昼も黒で白ですよね」
「そうだ。そういうことだ」
「何か御考えがあるんですね」
「なくて動くつもりはない」
平然と述べた。ここで船の中でロゼのワインを一杯飲むのだった。本郷と警視正も既にかなりの量の酒を飲んでいる。
「そうでなくとも見えないのだからな」
「じゃあ見えるようにはするんですね」
「そうだ。今夜早速仕掛ける」
彼は言った。
「それでいいな」
「何かまだよくわからないですけれどじゃあそれで」
とりあえず役の言葉に対して頷くのだった。
「やりますか」
「そう、今夜な」
こう答えてからまた言う役だった。
「それにしてもだ」
「今度は何なんですか?」
「本当に目立つな」
見れば役もまた烏を見ていた。そのうえで言うのだった。
「ここで烏は」
「はあ」
とりあえず二人は今の役の言葉に頷くだけだった。彼が何を考えているのかわかりかねていた。しかしその間にも時間は進み夜になった。その夜だ。
夜になると役はまず二人をある場所に案内した。そこは。
「ここですか」
「はい」
まずはそこに着いてから警視正に答えた。
そこはユトレヒト市街の中心であった。そこには街でもっとも目立つものがあった。それは塔であった。警視正はそこの頂上まで狭い階段を昇りながら役に問うた。
「このドムタワーにですか」
「そうです。まずはここです」
こう警視正に答える役だった。夜の塔の階段を彼が先頭に立って登っていく。
「ここからです」
「ここは確かにこの街の名所です」
ユトレヒトの象徴でもある。ドム教会の一部なのだ。かつてはカトリックの教会だったが今はプロテスタントのものになっている。塔が建てられたのは十四世紀後半でかなりの年代が経っている。そうした極めて古い塔なのである。その塔を今三人で昇っているのだ。
「しかし」
「しかし?」
「何故この塔に今?」
警視正はこう言って首を傾げるのだった。
「今どうして」
「どうしてですか」
「はい」
わからないといった顔でまた答える。
「私にはそれがどうも」
「おわかりにならないのなら何よりです」
しかし役は笑ってこう言うのだった。
「それでしたら」
「わかってい
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