約束
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く。
「無理ですね」
断りの言葉に、ワイドボーンが激高することはない。
小さな笑みを唇に残して、尋ねた。
「その理由を聞いてもいいか」
「ワイドボーン先輩に、もう俺は必要ないと思います。生意気な後輩はね」
「なぜそう思う。確かに貴様は先輩を先輩とも思わない最悪の後輩だ。だが、俺は貴様を必要と――」
「だから、次は先輩の番です」
ワイドボーンの言葉を遮って告げられた言葉に、ワイドボーンは鼻を鳴らした。
アレスの言葉の意味を問うことなく、太い眉に力を入れる。
「楽に逃げないでください。俺もワイドボーン先輩の下につけば、楽が出来るでしょう。でも、ワイドボーン先輩。あなたはまたそんな低いレベルの成功を求められる存在ではありません」
はっきりとした拒否の言葉に、ワイドボーンは不愉快そうな顔をした。
その言葉は、アッテンボローとの戦いの前に告げた、ワイドボーンの言葉そのままであったからだ。
「意趣返しのつもりか」
「そんなつもりはありません」
アレスは首を振った。
「まだまだ同盟に優秀な人がいるでしょう。けれど、この時代は死が多すぎる。おそらく、これから同盟軍はもっと厳しくつらい時代が来るでしょう」
「例によって、貴様の妙な予言か」
「ええ。そう思ってもらっても結構です。その時に少しでも戦える人間が欲しいのです」
「だから、貴様を部下にするのではなく、その空いた席に優秀な人間をそろえておけと。そう言いたいのか」
「ええ。今のワイドボーン先輩になら任せられますから」
「相変わらず、先輩を扱き使う奴だ」
ゆっくりとワイドボーンの表情に、笑みが戻っていった。
小さく楽しそうに笑い、
「よかろう。貴様を超える人間を用意しておいてやる。貴様が選ぶ時に使えない人間ばかりでも文句を言うなよ」
「それならそれで、こちらで何とかしますよ」
「貴様なら出来そうだ」
二人から楽しげな笑いが漏れた。
「俺の願いを断って、貴様の要望を聞くのだ。こちらからも要望を出して構わんだろうな」
「出来る事なら」
「何。簡単なことだ」
ワイドボーンは両のポケットに手を突っ込んで、悪戯気な笑みを浮かべた。
嫌な予感を感じて、アレスが小さく眉をひそめる。
その前で、ワイドボーンは気軽な口調で、口にした。
「貴様はこの戦争を終わらせろ」
+ + +
「頭は大丈夫ですか」
「ずいぶん失礼な言葉だな。これでも主席で卒業するくらい、頭は大丈夫だ」
「それならばわかるはずでしょう。そういう事はヤン先輩に頼むのですね」
絶望的な状況であって、不敗の名前を貫いたヤン・ウェンリー。
その実力は戦術シミュレータ大会で、遺憾なく発揮されていた。
しかし、そのヤンです
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