約束
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いえば、サハロフ中佐の受け持ちは」
「ええ。おそらくはサハロフ中佐もその答えを理解していなかったのでしょう。だから、私に聞きに来たのだと、そう思います」
「そうか。スレイヤー少将」
サハロフ中佐は残念だ。
だが、まだ、まだ残っている。
同盟の事を考える若者が――だから。
スレイヤーの名前を呼んで、シトレは声に力を込めた。
「何でしょう、シトレ大将」
「彼を死なせるな」
「ボケましたか、学校長。元より教え子は誰であろうと死なせるつもりはありませんな」
「そうだな。良い日だ、今日は本当にいい日だ」
シトレはゆっくりと笑えば、明るい日差しに小さく目を細めるのだった。
+ + +
校舎前の広場に卒業生が集まる中で、裏庭で一人長身の男が待っていた。
腕時計を確認して、いらいらとする姿に呆れ顔でアレスが姿を現す。
その姿を発見して、その男――マルコム・ワイドボーンは少し唇を尖らせた。
「遅いぞ、後輩」
「こちらは先輩と違って、まだ残るのですよ。卒業式の後片付けを誰がすると思っているんです」
「そんなもの他の奴に任せてしまえ」
「そうできないから、遅れたんでしょう。何です、卒業式後にすぐに裏庭て――そういうのは、もっと可愛い子を捕まえていってください」
「ふん。誰が腕立て伏せを200回鼻歌混じりでやるゴリラに告白するんだ」
「それが求められるのが、軍でしょう」
呆れを深くさせながら、アレスは小さく首を振った。
「で。何です。テイスティアなら無事進級できたそうですよ」
「ふん、当然だな。俺達が大会以降も教え続けて、進級できなかった方が問題だろう」
「相変わらずですね」
アレスが小さい、ワイドボーンの言葉を待った。
ワイドボーンはしばらく不機嫌そうであったが、すぐに表情を変えた。
真剣な眼差しだ。
遠くからは卒業生たちの歓声が、小さく聞こえてくる。
そのざわめきを背後にして、ワイドボーンが重く口を開いた。
「……貴様、俺の部下になれ」
はっきりとした言葉に、アレスが目を開いた。
嘘や冗談ではない、真剣な口調に――浮かびかけた、からかいを息とともに飲み込んだ。
「無理ですね。部下になるといって、簡単になれる世界でもないでしょう」
「ふん。そう思うのは凡人の発想だ――人事など優秀な者にはある程度優遇される世界だ。実際に艦隊司令官の周辺人事など、艦隊司令官にほぼ一任されているだろう」
「どこまで上を例にとるのですか」
「そこまでいかずとも、不可能ではない。だから」
と、ワイドボーンは再びアレスに問うた。
「俺の部下になれ。俺は貴様の卒業するあと三年で地位を築いてみせる」
真剣な言葉だった。
だから、ゆっくりとアレスは頭をか
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