第十章
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第十章
「来ます。上です」
「そうか」
役は彼の言葉に頷く。すると彼の周りを漂っていた青い羽根が上に一斉に向かう。そうして上から迫ろうとしていた魔物の身体を切り刻んだのだった。
「この羽根はただの羽根ではない」
役はその上を振り向きもせず述べた。
「近寄ってきた相手を切り刻む。こうしてな」
「お見事と言いたいですけれどね」
本郷は彼が戦うのを見て言う。その言葉は醒めたものだった。
「それでも。相手にとっては大したことじゃないみたいですよ」
「傷は浅いか」
彼の言葉からだけそのことを悟ったのではなかった。もう一つその根拠があった。
「そうだろうな。血は流れてはいない」
「ですね。滲み出てはいますよ」
本郷はそれもまた見えていたのだった。魔物の今の状態も。
「黒い血がね」
「その程度か」
「はい、その程度です」
また述べる本郷だった。
「残念ですけれどね」
「なら。また来るか」
役は本郷の話からすぐにそのことを悟った。そうすると次は懐から赤い札を出してきた。それを放つと赤い火の玉になり複雑な動きをして宙を舞うのだった。
それは一つ放ったのではなかった。複数放った。火の玉達はそれぞれの動きをして宙を舞う。その火によって相手の姿も映し出された。
「見えたぞ」
「ええ、そこですね」
本郷はその映し出された姿を見てそこに小刀を投げた。それは闇夜の中に白銀の光を見せて魔物に襲い掛かる。そのうえで肉を突き刺す音を立てさせたのだった。
「やったか」
「いえ、これも浅いですね」
本郷は苦い顔で役に述べた。
「最初から見えていましたけれどね。それでも」
「小刀は通用しないか」
「ダメージは与えています」
それは確かだと言うのである。
「ですかそれでも」
「傷は浅いか」
「血は出ています。黒い血が流れ出ています」
やはり本郷にはこれも見えていた。
「しかしこいつは俺だけじゃ無理ですね」
「では私も」
「どうされます?」
本郷は宙を舞いながら役に問う。彼はそのまま飛び姿が見えているその魔物に対して向かう。そうして切りつけるが刀は闇の中に白銀の光を見せただけであった。
「かわされたか」
「俺だけじゃ無理みたいですね」
本郷は攻撃がかわされたのを自分でも見て述べた。
「どうやら」
「そのようだな。この魔物はだ」
「悪いですけれど俺一人じゃ防げはしますけれど倒せはしませんね」
「どうやら私だけでもな」
役も言った。
「二人同時に攻撃しないと倒せない相手のようだな」
「けれどどうです?」
本郷はまだ魔物にその手にしている日本刀で攻撃を浴びせる。しかしその攻撃はどれもかわされてしまっていた。白銀の煌きだけが闇の中に見えるだけである。
「役さん相手は見えま
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