第壱章 【転入編】
男子校×全寮制=薔薇がさく 【プロローグ】
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{side I}
俺は有名どころの書道家一族に生まれた。
物心がついたころから筆と墨を持っとった記憶がある。 嬉しいことがあった日も、嫌なことがあった日も、親父と祖父からはその気持ちを文字で表せと言われてきた。
俺自身、書道をするんは楽しかったし、その事を苦には思わんかった。
家に縛られてるとか自分の夢を追いたいとか、そんなん考え付きもしいひん。
だから、俺はずっとこの家で一生を送るんやろうと思ってた...のに
「なんで東京やねん...もうほんまに嫌や...」
なぜか俺は今、でっかい門の前におる。
数日前、めずらしく親父から呼び出されたかと思えば「東京の高校に行け」のたった一言。
あん時はさすがに落ち着けんかったし、イライラしたけど、俺の実家も一応は名が広まってる。
色んな金持ちから依頼がくることも珍しくない。
親父が言うには「今のうちから世を渡っていくために色んなことに慣れとけ」だそうや。
なんでも、その高校っていうんが金持ち校らしい。
俺も所作や礼儀はわきまえてるつもりやけど、確かに親父の言うとおりかもしれん。
今のうちに空気に慣れとかなあかん、そう思ってきたんやけど...。
「全寮制の男子校で、しかも山奥って...最悪やんかぁ...」
東京駅からタクシーで移動し、山の上に行くまでを市バスで二時間...めっちゃ疲れたわ。
その道中、親父からもらったパンフレットに目を通すと「男子校」の三文字が書かれてた。
全寮制っていうんは知ってたけど、まさか全員男とは思ってなかった。
しかも今現在、門の開け方がわからんくって立ち往生している。
俺はすっかり疲労困憊してしまっていた。
しばらくつっ立っていると、門の中から警備員らしき人がこちらに向かって歩いてくるんが見えた。
「本日から転入される、朝比奈伊吹さんで間違えないでしょうか」
「はい、そうです」
「お待たせしてしまい、申し訳ない。門番兼案内役の片岡です」
片岡さんは俺のイントネーションがずれているんに、一瞬驚いていたが丁寧に学園案内をしてくれた。
「では、学園案内は大体これで終わりです。寮長の部屋に行って部屋の鍵をもらってください。 その後のことは同室者が教えてくれるでしょう」
「はい、分かりました。案内してくださってありがとうございました」
俺がにっこり笑うと、片岡さんもきれいな笑顔を返してくれた。
「では失礼します」
ぺこりとお辞儀をする。これで完璧や。
それにしてもでっかくて綺麗な校舎やったな。教室を覚えるんが大変そうやったけど、理事長と寮長の部屋は何回も確認したから、迷わず行けるやろ。
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伊吹が校舎
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