第五十九話 視線の先には
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し、他者に答えを求めようとするのは無知以上に滑稽なことだと私は思うよ。今の君を見るとね――――だが、疑問には答えようではないか」
芝居がかったように歩きながら普段から使っているチェス盤の前に立ち、答えを言う。
「私にとって敵とはロゴスという組織やアークエンジェルを中心とした個人の集団ではないのだよ。そして、私が危惧する真の敵と相対するためには技術や軍事力は必要不可欠だ。だが、ザフトという一組織の枠ではそれは補いきれない。だからこそ、ロゴス、連合、ジャンク屋、ファクトリーあらゆる組織に対して情報を少しずつ与えた。そして、その成果は総て私の手元にある」
「馬鹿な……なら我々は、私はその真の敵とやらを討つための壁でしかないとそう言うつもりか!?」
「いいや――――路傍の石ころを壁だと恐怖する人間などいないだろう?」
そして、今ここで初めてデュランダルの目を見て恐怖する。あまりにも器が違う。だが、それは人間のものとは思えないほどの深い情景だ。
「き、貴様は狂っている!狂っているぞ、デュランダル!?」
その言葉を前にしても笑みを崩すことのないデュランダルの様子にアズラエルは腰を抜かして震える。こいつは本当に同じ人間なのか?
「視点の違う他者の行動を見た所で、その意義を理解することは出来ないさ。ましてや見ようとしている道筋が見当違いの方向にあればなおさら――――」
新たな成果を生み出してきた人間は常人には理解できない不可解な行動を起こすことがあるという。それは総てを見据えた理性的なものなのか、本能的にそれが正しい行いだという優れた嗅覚をもっているのかはさておき、多くの天才と呼ばれた人間にあることだ。
「全ては私の筋書き通りだったというわけだ。役者が良ければありきたりなこの芝居も良いものとなっただろうが、アズラエル――――君という存在は最早力不足だ。せめてこの舞台が己の身の丈に合っているうちに消えておきたまえ」
テーブルに置かれていた拳銃を手に取り、アズラエルに向けて構える。
「貴様の言う真の敵とは、一体何だというのだ……」
恐怖が限界を通り越し、自分でもなぜこんなことを聞いたのかが理解できぬままにそれを尋ねた。
「なに、簡単なことだ――――」
拳銃の引き金を引き、一発の凶弾が放たれるとともに彼はその答えを口にする。
「――――人類という自らの種そのものだ」
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