第5章 契約
第74話 翼人
[6/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
つまり、下草などが刈られて、木々の根本の方まで風通しの良い状態に維持されている雑木林を少し進むと、
「この女性が、翼人と言う存在なのか?」
背後に着いて来て居る蒼き少女に対して問い掛ける俺。
俺の立ち止まったその視線の先に存在する繁みの中に、一人の少女が横たわって居たのだ。
そう。全体の印象として言うのなら、黒い女性。黒い髪の毛。黒い服。そして、黒い……。まるで、鴉のような。いや、天の御使いとは対と成る存在として絵画などに描かれる存在が背中に持つ黒い羽根。
そんな黒い女性が秋の夕陽が支配する世界の中心に横たわって居たのでした。
タバサから同意を示す気配が発せられた。
それと同時に、俺の方がその繁みに倒れ込む女性に近付き助け起こす。
その瞬間、むっとするような臭気と、ぬるりとした嫌な感触を手に感じた。
うつ伏せに成って倒れて居た女性……。顔や身体付きから推測すると少女と言って良い雰囲気。但し、タバサやイザベラの話から想像すると、人間と比べるとかなり平均寿命が長いようなので、本当に見た目通りの年齢で有るとは限らないのですが。
その、うつ伏せに成って倒れて居た女性は身体中に酷い手傷を負って居た。
現在も出血を伴う腹部を切り裂いた傷は、かなり鋭利な刃物で切り裂かれた傷なのか一直線に線を引いたように切り裂かれて居り、このまま放置すれば間違いなく致命傷と成る大きな傷。
そして、身体の各部に存在する細かな裂傷の類は、おそらく上空から落ちて来た際に、枝を引っかけた時に出来た傷。不自然に折れ曲がった黒い羽根に関しても、その際に骨が折れたのでしょう。
何故ならば、彼女が倒れて居る場所だけは下草が荒れているのですが、他の箇所に関してはそんな雰囲気もなく、もし、彼女が歩いてこの場所にやって来たのなら、周囲に点々と続いて居るはずの血の跡も、ざっと見回した限りでは発見する事は出来ません。
まして、彼女の頭上に存在している樹木のみ枝が折れ、そこから、そろそろ紅から蒼に変わりつつ有る世界の色彩を伝えて来て居ましたから。
抱き起した少女は完全に意識を失っているのか身じろぎひとつ行う事はない。ただ、微かに続けられる吐息のみが、彼女の生命の灯がかき消されていない事の証明で有るのは間違いなかった。
そう。彼女は辛うじて息をしていました。普通の人間ならば間違いなく生命を失って居たとしても不思議でも何でもない程の出血が地面に赤黒い染みを作り上げながらも、彼女は息をして居てくれたのですから。
これならば、
【シルフ。治癒魔法を頼む】
【念話】で、今回の任務に連れて来た式神の内、治癒魔法を一番得意とする風の精霊シルフに対してそう依頼を行う俺。
この状態ならば、確実に彼女を救う事が出来るはずで
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ