第5章 契約
第74話 翼人
[3/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
そうすると、そのゴアルスハウゼンの村の近くに流れるライン川は、父なるライン川の流れの中でも一番流れが急で、航行中の船の多くが沈んでいる、とか言う話はないのか?」
嫌な予感。……いや、嫌な予感と言えばもっと大きな物。今夜がスヴェルの夜だと言う事実以外に、もうひとつ気に成って居る内容を問い掛ける俺。
そんな、俺の問い掛けに僅かに瞳のみで首肯いて答えるタバサ。その瞬間、彼女の紅いフレームにかなり傾きつつある太陽の、十一月に相応しい弱々しい光りが反射された。
成るほど。ライン川でゴアルスハウゼンと言う事は、かなり有名な妖精、もしくは妖鳥が存在して居ましたか。
もっとも、
「その船の転覆にローレライと言う名前の魔女が関わって居る、などと言う伝説はないよな」
そうやって、少しの軽口で重く成りつつ有った雰囲気を和らげて置く俺。
そんな俺の言葉に対して、蒼き少女は律儀に小さく首肯いて答えてくれたのでした。
尚、これから向かう村での仕事は、龍脈を掌握し、土地神をガリアの支配下に置く以外にもうひとつ大きな物が存在しています。
それは、この地方の主要な産物のひとつ、木材について起きて居る問題を解決する事。
確かに、ハルケギニア世界は中世ヨーロッパと似た状況の世界ですから、建築に木材を大量に必要とする訳ではないのですが……。
それでも、家具などには当然のように木材を使用しますし、更に、今年の夏以降、ガリアに取って木材を安価で大量に手に入れられる地域の重要性は増しましたから。
確かに、元々、このハルケギニア世界にも紙は存在して居ました。
しかし、それは古い布を再生してから作り出す、非常に質の悪い紙。
まして、家畜を消費する際に発生する皮を転用する羊皮紙なども大量に出回る為に、わざわざ質の悪い紙などを使用せずとも良い状況が出来上がって居ました。
更に活版印刷なども一般的では有りませんでしたし、庶民の識字率に関してもかなり低い状態。これでは書物を必要とするのはごく一部の特権階級だけですから。
この部分に関しては、俺の周囲。タバサや湖の乙女。それに、イザベラなどは例外中の例外。その三人に関しては、非常に恵まれた立場の人間だったと言う事です。
しかし、このガリアではその状況は変わりつつ有ります。
この九月より実験的に稼働を始めた地球世界の製紙工場が産み出す、木材パルプを使用した質の良い紙と、
これも実験的にハルファスに因り調達して貰った活版印刷の機械に因り、情報の大量生産や大量消費が可能と成る芽が、このハルケギニア世界でも作り出されたと言う事。
結果、良質の木材を産するこの地方から、大量に木材を伐り出させるような状態と成って居るのですが……。
但
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ