Mission
Mission10 ヘカトンベ
(5) マクスバード/リーゼ港 C
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ら、行き方でうだうだ悩む必要はない。そうすればルドガーは死なずにすむと考えたんじゃないかしら」
「ないかしら、って……他人事みたいに言うなよ! ――くそっ」
ルドガーは二度踵を返した。今度こそエルを探しに行くために。だがそれを、ユティが前に立ち塞がって止めた。
「どけ!」
「心配すべき相手が違う」
「ユティっ!」
「一番に身を案じるべきは、ルドガー、アナタ」
予想外の指名。ルドガーは勢いを削がれた。
かぶせるタイミングで問いを発したのは、ジュードだった。
「まさかユティ、ルドガーが『橋』にされると思ってるの?」
「俺…?」
仲間たちの反応は疑問と納得に割れた。
「なるほど、そういうことか」
「え、アルヴィン、今ので分かったんですか?」
「ビズリーがさっき言ったろ。ルドガーは成すべきことを成した、って。『道標』は全て集まった。分史世界はこれからオリジンに願って消す。もう分史破壊はしなくていい。つまりルドガーが働く場がない」
「ルドガーはクランスピアにとって抹殺するのに不都合のない存在となったということだ」
「! ちょっと、ガイアス!」
咎めるレイアの声が霞んで聞こえる。レイアだけではない、みんなの声が聴こえない。音が耳に入ってこない。脳が現実の受け入れを拒否している。
(俺を、殺す? 俺をエージェントにしたのは、いずれ殺すつもりだったから?)
戦っていれば死とは隣り合わせの背中合わせ。分かっていたのに麻痺していて、今、突きつけられたそれに対し、ルドガーの処理は追いつかない。
(死…死ぬ…俺が、死ぬ…)
急な吐き気にルドガーは外聞もなく口を押さえて体をくの字に折った。近くにいたアルヴィンとジュードがルドガーを慌てたように支えるが、やはり彼らの声は遠く聞き取りづらい。
だからルドガーは、支えてくれる二人に対しても、「大丈夫だから」と言い張って離れてもらった。
どうしてか、どうしても、他者の感触に我慢がならなかった。
「探しましょう。ルドガーや、他のクルスニクを『橋』にしなくてもいい方法」
口火を切ったのはミラだった。
「断界殻を開いたジュードと、クルスニクのルドガーが出会った。これはきっと必然。だったら今までの歴史でなかったことが起きたって不思議じゃない」
ミュゼも笑ってミラの言葉を接いだ。
「……さがして、くれるのか? 『魂の橋』以外のやり方」
ようやくルドガーの聴覚も再稼働を始めた。
「当たり前です!」『友達だものー』
「誰か一人を犠牲にしての勝利ほど、後味の悪いものはありませんからね」
「……ありがとな。みんな」
仲間たちはみんな笑った。ルドガーは心から安堵した。
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