Mission
Mission10 ヘカトンベ
(5) マクスバード/リーゼ港 C
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「あンのバカ…! また一人先走りやがってっ」
アルヴィンが自分の掌にパンチをぶつけ、両拳を握りしめる。
「アルヴィン……」
「! …わり。本当に怒っていいのはおたくのほうだよな」
ルドガーは首を横に振った。現実、アルヴィンの言う通り、怒りどころを失ったルドガーの困惑がユティにはありありと伝わったのだが。
(少なくともこれでクロノスがルドガーを『鍵』と勘違いして襲うケースは回避できる。エルが『鍵』だともバレにくくできた。問題はこれから。『鍵』が本当はもう一人いると知ったおじいちゃまがワタシも利用しようとするのを掻い潜らきゃいけない)
後ろの離れた位置にいたジュードたちが集まってきた。
「ビズリー。『カナンの地』へ入る方法を知っていると言ったな?」
ガイアスが皆を代表して問う。びくん、と傍らのエルが震え上がった。翠の瞳孔が限界まで見開かれていく。この調子なら大丈夫だ。
「――ああ」
ゆえにユティは黙して待つ。エルがトリガーを引くのを。後戻りの利かない展開のスタートを告げるのを。
「行かなくていい」
幼く、されど凛とした宣言が、埠頭に響き渡った。
(状況――成功)
「カナンの地なんて、行かなくていいよ!」
エルの急な変心は、ルドガーはもちろん、あのビズリーでさえも軽く瞠目させた。
「いきなりどうしたの、エル」
「分かってるでしょう。全ての分史世界を消すには、カナンの地でオリジンに願うしか――」
「そんなの! みんなで何とかしてよ!」
エルがルドガーの手を掴み力任せに引っ張る。幼女の腕力とはいえ、予告なく引っ張られたルドガーは堪ったものではない。つい前のめりになる。
「エルもルドガーも関係ない!」
「ちょ、ちょっと、エルっ。どうしたのよ。落ち着いて、分かるように話して?」
ミラが輪を抜けてそばに来た。しかし、何とエルは、ルドガーを引っ張ってミラの手を逃れた。
ショックを受けるミラへ手を伸ばしたくとも、ルドガーはエルに捕まっていてミラに届かない。
ルドガーはしゃがんでエルと目線の高さを合わせて。
「みんなの言う通りだ。どうして急にそんなこと言い出すんだ。――約束しただろ。一緒にカナンの地へ行くって」
エルの細い両肩に手を伸ばした。
エルは、――ルドガーの手を叩き返した。
「約束なんて……どうでもいい!」
「……どうでもいい?」
「約束より……っ大事なことがあるんだよ!」
エルは彼女にとって命の次に大切であるはずの真鍮時計を外し、ルドガーに投げつけると、そのまま港から走り去った。
(エル、泣いてた…何で? せっかく念願の『カナンの地
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