暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第二章 風のアルビオン
第二話 婚約者と決闘
[13/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
「君の腕前もね」 





 士郎はデルフリンガーを引き抜き、一足飛びにワルドに斬りかかった。
 ワルドは杖で士郎の剣を受け止めようとするも、士郎の動きが予想よりも早かったため、後ろに飛び斬撃を交わす。足が地面に着くと同時に士郎に向かい、杖をレイピアの如く突き出しながら飛びかかる。
 唸りを上げ迫る突きをそらすようにしてずらすと、士郎は杖を流す勢いそのままにワルドに斬りかかった。
 頭上から振り下ろされる剣を、ワルドは魔法衛士隊の黒いマントを翻らせ、後方に飛び退り避けると、構えを整えた。
 
「なんでぇ、あいつ、魔法を使わないのか?」

 デルフリンガーがとぼけた声で言った。

「さてな、使えないのか使わないのか……」
 
 速い……な、やはり、ギーシュとは格が違う―――だが。
 魔法衛士隊の隊長だというだけあって、ワルドがかなりの実力者であると分かったが。驚く程のものは見当たらない。これがこの世界の実力者の力なのか、それとも実力を隠しているだけなのか。

「魔法衛士隊のメイジは、ただ魔法を唱えるわけじゃない」

 ワルドは羽帽子に手をかけて言う。

「詠唱さえ戦いに特化されている。杖を構える仕草、突き出す動作……杖を剣のように扱いつつ詠唱を完成させる。軍人の基本中の基本さ」

 士郎は剣を構えなおすと、ワルドに斬りかかる。士郎の剣には派手な技は無く、ただただ剣を振るうだけ、しかし、その一つ一つが速く、重い。最初の頃は、余裕の顔をして相手をしていたワルドの顔は、士郎が剣を一振りするごとに余裕が無くなり、その服には所々剣がかすり、傷が出来ていた。

「っく! ……さすがは伝説の使い魔だな……しかしっ、所詮平民っ……これならば」

 ワルドが大きく後方に飛びすさりながら呪文を詠唱し始める。
 
「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」
「相棒! いけねえ! 魔法がくるぜ!」
 
 杖を操る腕は確かに達人の域に達してはいるが……援護のない、一対一の戦闘中に詠唱とは、舐めているのか? ワルドが飛び退りながら詠唱を始めようとするのを見た士郎は、その舐めているとも言える行動に頭にきながらも、足に力を込め、まだ空中にいるワルド目掛け斬りかかる。

 ワルドが詠唱を始めたことに気付いたデルフリンガーが、士郎に対し警告の声をあげた瞬間、見えない巨大な空気のハンマーが士郎に向かう。だが、その時には既に士郎は、デルフリンガーの警告の直前、ワルドが後方に飛ぶのに合わせ、ワルドに向かい斬りかかっていた。空気のハンマーは、すでに士郎がいない場所を通り過ぎるのみで、士郎の服にかすりもしなかった。
 
「なっ、何っ!?」
「勝負あり……だな」

 士郎に剣を突きつけられたワルドは、苦虫を噛み潰したような顔で
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ