第二章 風のアルビオン
第二話 婚約者と決闘
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「君の腕前もね」
士郎はデルフリンガーを引き抜き、一足飛びにワルドに斬りかかった。
ワルドは杖で士郎の剣を受け止めようとするも、士郎の動きが予想よりも早かったため、後ろに飛び斬撃を交わす。足が地面に着くと同時に士郎に向かい、杖をレイピアの如く突き出しながら飛びかかる。
唸りを上げ迫る突きをそらすようにしてずらすと、士郎は杖を流す勢いそのままにワルドに斬りかかった。
頭上から振り下ろされる剣を、ワルドは魔法衛士隊の黒いマントを翻らせ、後方に飛び退り避けると、構えを整えた。
「なんでぇ、あいつ、魔法を使わないのか?」
デルフリンガーがとぼけた声で言った。
「さてな、使えないのか使わないのか……」
速い……な、やはり、ギーシュとは格が違う―――だが。
魔法衛士隊の隊長だというだけあって、ワルドがかなりの実力者であると分かったが。驚く程のものは見当たらない。これがこの世界の実力者の力なのか、それとも実力を隠しているだけなのか。
「魔法衛士隊のメイジは、ただ魔法を唱えるわけじゃない」
ワルドは羽帽子に手をかけて言う。
「詠唱さえ戦いに特化されている。杖を構える仕草、突き出す動作……杖を剣のように扱いつつ詠唱を完成させる。軍人の基本中の基本さ」
士郎は剣を構えなおすと、ワルドに斬りかかる。士郎の剣には派手な技は無く、ただただ剣を振るうだけ、しかし、その一つ一つが速く、重い。最初の頃は、余裕の顔をして相手をしていたワルドの顔は、士郎が剣を一振りするごとに余裕が無くなり、その服には所々剣がかすり、傷が出来ていた。
「っく! ……さすがは伝説の使い魔だな……しかしっ、所詮平民っ……これならば」
ワルドが大きく後方に飛びすさりながら呪文を詠唱し始める。
「デル・イル・ソル・ラ・ウィンデ……」
「相棒! いけねえ! 魔法がくるぜ!」
杖を操る腕は確かに達人の域に達してはいるが……援護のない、一対一の戦闘中に詠唱とは、舐めているのか? ワルドが飛び退りながら詠唱を始めようとするのを見た士郎は、その舐めているとも言える行動に頭にきながらも、足に力を込め、まだ空中にいるワルド目掛け斬りかかる。
ワルドが詠唱を始めたことに気付いたデルフリンガーが、士郎に対し警告の声をあげた瞬間、見えない巨大な空気のハンマーが士郎に向かう。だが、その時には既に士郎は、デルフリンガーの警告の直前、ワルドが後方に飛ぶのに合わせ、ワルドに向かい斬りかかっていた。空気のハンマーは、すでに士郎がいない場所を通り過ぎるのみで、士郎の服にかすりもしなかった。
「なっ、何っ!?」
「勝負あり……だな」
士郎に剣を突きつけられたワルドは、苦虫を噛み潰したような顔で
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