第十話 幼児期I
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り、身体もだいぶ温まったらしい。満足そうに毛づくろいをした後、彼女は軽い足取りで目的地へと向かった。日照りの暑さがなりをひそめる時間。これぐらいの時間帯になると、そろそろテスタロッサ家恒例の日常風景が始まるからだ。
和やかな一時。彼女のしっぽは、小気味よいリズムで振られていた。
******
――リニスが来てから2カ月後――
「ジャックの豆の木って本当にあったらすごいよな」
「ジャックさんってだれ?」
質問されたので、妹に童話の説明をする。暇な時、俺は前世で読んだことのある物語やお話を妹に教えている。桃から生まれた桃の人の話や、それ関連で桃姫のさらわれ旅行記や、桃電の貧乏神あんちくしょうの話もしたことがある。
さっきまでぼんやり眺めていた駆動炉を見ていて、童話をふと思い出した。前に風を感じるために転移した時も思ったけど、ミッドって高いところ好きだよな。まじで雲まで届きそうな建物多いしね。
「ジャックさんはすごいんだぞ。天まで届きそうな豆の木をちょっくら登ってみようで登りだす人だ。命綱なしで。しかも結構頻繁に、短時間で。お前どこの伝説のクライマーだよってぐらいだ。しかも最後は豆の木を斧で切り落とすんだぜ。どんなパワーだよ」
「お兄ちゃんがツッコんでる」
「大きくなると自然とこうなる」
まだまだ純粋な妹のままでいてくれ。昔話は大きくなるとツッコミどころ満載過ぎて、話の内容よりそっちの方が気になりだすから。不思議だ。
妹はへぇー、という感じで感心している。話が終わると、アリシアはベランダに目を向けて、空を仰いだ。
「お空まで木が生えるんだー」
「らしいぞ。さらににゅるにゅる伸びるらしい」
「へびさんみたい!」
相変わらず動物関連には反応はやいなー。いやはや。
「そーれ、にゅーるにゅーる」
「にゅーるにゅーる!」
なぜか二人で不思議な踊りを踊っていた。妹とにゅるにゅるで白熱した。
「リニスも一緒にやるか?」
「ふっ」
このにゃんこ鼻で笑いやがった。ソファの上でごろごろしていたリニスにお誘いをかけたら振られた。だんだん容赦なくなってきた気がする。というか猫なのに、かなり感情表現がわかりやすくなった。なんでだろ。
あれから何度か立ち合ったけど、猫なのになんでこんなに強いの? 異世界の猫は、実はとんでもない進化をしているんじゃないかと最近思う。それにしても、まったくデレ期が来ないよ…。
ちょっと打ちひしがれていた俺の隣から、妹がきらきらした目でリニスを見ていた。リニスもその視線に気づき、微妙に焦っている。あっ、これはいけるかも。
「リニスもやろー? 面白いよ」
「ふにゃ!?」
「そうだ、そう
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