第十話 幼児期I
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また」ってどういうことだ、コーラル。
俺は視線をリニス達に向ける。そこにはコーラルを投げたり、ころころ転がしながら戯れて遊ぶリニスの姿があった。おそらく朝もコーラルで遊びまくったのだろう。今は食後の運動とでもいうように、元気よく遊んでいる。リニスはすごく楽しそうだ。にゃーにゃー言ってる。
「……コーラルの裏切り者ォー!!」
『裏切ってなんかないですよォ! というか助けて下さァーい!!』
「うるせェ! もふもふできているくせに! 肉きゅうにぷにぷにされているくせに!」
『楽しんでいるのリニスさんだけですよ!? 遊んでいるじゃなくて遊ばれてるのですよォ!?』
「俺なんて遊ぼうとしたら逃げられるんだぞ! それだったら俺も遊ばれたいよ!!」
『大声で何とんでもないこと叫んでるの!?』
ひどい光景だった。
******
これは1人の少年と1匹の猫の軌跡である。
――リニスが来てから1週間後――
「リニスー、おやつだぞー。欲しくないかー?」
「にゃう?」
アルヴィンはおやつを片手にリニスに近づく。古今東西、動物を懐かせるために必要なことは何か。そう、それは餌付けである。
「さぁ、欲しいだろう。遠慮することはないぞ」
「……にゃぅ」
警戒はしているが、視線はおやつに集中している。リニスが恐る恐る近づいてきたことに、アルヴィンは心の中でガッツポーズした。やっぱ餌付けだよね。先人の言葉は偉大だ、と心から誉めたたえていた。
だから気付かなかった。リニスの目は明らかに家猫の目ではなく、野生溢れる狩猟の目であったことを。
結果:狩られた
――リニスが来てから2週間後――
「おやつは駄目。おもちゃも駄目か…」
アルヴィンは悩んでいた。先日おもちゃを用いて再戦したが、隙をつかれてまたしても狩られてしまった。猫に狩られる少年。数日間続くやり取りは、テスタロッサ家の日常風景の1つに収まりそうになっていて、さすがの少年も焦っていた。
おのれあくまで野生根性で攻めてくる気か、あのアマゾネス。だが、そこまで考えてアルヴィンは気づいた。もう1つ動物をおとなしくさせる方法を思い出したのだ。しかし、それは動物好きな己にとっても出来ればやりたくないことであり、相手は猫でしかも女の子だ。
「わかっている。だけど俺は……もふもふしたいんだ」
アルヴィンは決意する。野生を相手にする場合の対処法。そう、それは相手を屈服させることだった。
「悪いな、リニス。今日の俺は覚悟を決めたんだ」
「にゃ…」
リニスも今までとは相手の気迫が違うのを感じ取る。だが、それに怖気づくことはなく真っ直ぐに見据えている。対格差はアル
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