第十話 幼児期I
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「お、リニスおはよう。よしよし俺から朝ご飯のネコフードを進呈してあげよう」
「しゃー」
威嚇された。
「にゃーにゃー」
「あら、お腹がすいたの? 今用意するわね」
「ふにゃぁー」
母さんがそう言って立ち上がると、嬉しそうにごろごろ言っている。薄茶毛の毛並みはもふもふしており、母さんの足をすりすりと身体を寄せて、甘えていた。かわいい。けど、おかしい。絶対おかしい。
「くっ、こうなったら猫じゃらしはどうだ! リニス、これであそ―――」
「ふしゃァァー!」
もっと威嚇されました。
朝ご飯を食べ終わり、食器を台所まで運んで片づける。視線の先には、アリシアがリニスを抱っこしていた。妹はもふもふの毛並みに気持ちよさそうにしている。時々顔をずむっと埋めて、堪能していた。リニスは母さんとアリシアにはすごく懐いているのだ。
「なぜだ。なんでこんなにも警戒されてるんだ」
『自業自得な気もしますが…』
あ、おそようコーラル。なんかぼろぼろになってないか。
「って、待て。自業自得とはどういう意味だ」
『そりゃ、ファーストコンタクトがあれでは仕方ないですよ』
えっ、俺なんかしたか。
「もふろうとしただけじゃん」
『……わかってるじゃないですか』
「え、なんで。あんな立派なもふもふだぞ。もふるだろ。数年間、俺は禁もふ生活していたんだぞ」
『そのよくわからない執念感じて、警戒されちゃったんでしょうが』
そ、そんな馬鹿な! 俺のこの溢れるもふり精神がぬこ様に届き過ぎてしまったというのか!?
俺はその事実にガクッと項垂れる。そんな俺の様子にコーラルが慰めるように、俺の隣に来て声をかけた。
『あのますたー。もともと山猫はあまり人に懐かない、気ままな動物ですから。そんなに気を落とさずに頑張りましょう。きっといつかもふらせてくれますよ。きっと、たぶん、おそらく』
「慰めてるのか、追い打ちかけてるのかどっちだ」
でも、そうだよな。諦めたらそこで試合は終了だよな。ありがとう、コーラル。俺もふるよ。頑張ってもふってみせるよ。
「にゃー」
「『え?』」
すぐ近くで鳴き声が聞こえて来たので振り向くと、そこにはリニスさんがいた。まさかいきなりのチャンス到来ですか。落ち着け、俺。ここでもふり魂を発揮したら、今までの繰り返しだ。俺は息を整え、真っ直ぐにリニスと向き合った。
コーラルもじっと静観している。あぁ見ててくれ、相棒。俺は……やってみせるよ。
「リニ―――」
「うにゃぁー!」
『え、ちょッ…! なんでまた僕に襲いかかって来るのですかァァーー!?』
リニスがコーラルを咥えて、駆け抜けていった。俺、素通りされた。というか「
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