森林での戦い
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、出ておいで」
朱美が言うと、物陰に隠れていた湯治客達が姿を現した。
「一応片付いたけどまだ完全じゃない。すぐに出発するよ」
朱美はそう言いつつ湯治客達に近付きつつ、小銃に安全装置を掛ける。
その直後――――――
「ギャオオオオオッ!」
――――――追い付いてきた二頭のドスジャギィが複数のジャギィとジャギィノスを連れて森の奥から現れた。ドスジャギィはアオアシラに付けられたらしい傷を負っていたが、戦闘には支障がなさそうだった。
「……言ってる側からこれかい」
「やべえな」
「だが逃げられんぞ」
「ったり前だ。一般人だけでも逃げ延びさせるぞ!」
新たな敵を前にしてもハンター達は威嚇を繰り返すジャギィ達に向けて己の武器を構える。
「うっ!?」
小銃を構えた朱美が呻き声を上げた。
「どうした?」
「さっきの擲弾だね……あの反動で銃身に亀裂が入ってる」
これじゃ危なくて撃てないよ、と朱美は小銃のボルトを引いて薬室と弾倉内の残弾を取り出しつつ言った。
小銃上部の銃身には小さな亀裂が走っており、これでは撃った弾が狙い通りに飛ばないばかりか、破裂した銃身の破片が自分や仲間に降りかかる可能性が高い。つまり、使い物にならないのだ。
その顔にはガンナーとしての戦力を失ったことに対する焦燥感を隠し切れずに引き攣った笑みが張り付いていた。
「……せめてガキと客を守んな」
テツが前だけを見て言う。
「そうだね」
朱美は小銃の先端部の着剣装置に銃剣を取り付けながら返事をした。その顔にはもう焦燥感は無い。出来る限りのことをするまでだ、と、自身の役目を悟った者の表情だった。
ジャギィ達がゆっくりと間合いを詰めてくる。その表情は仲間を殺された事を怨んでいるのか、怒りを露にしているように見えた。
「来るぞ!」
タクの言葉に全員が身構え、ジャギィ達が一斉に身を低くして今にも突撃出来るような体制を取った――――――その直後だった。
僅かな風切り音と共に湯治客達の後方から何かが飛来してドスジャギィの額を貫いた。
力を失ったドスジャギィが倒れ伏し、突然の事にざわめくジャギィ達と呆然とする朱美達……そして――――――
「待たせたな」
と、何処からか飛んできたように地面に着地する、ユクモの狩人装束を身に着けた一人の長身の男が、背を向けたまま呟くように言った。
その左手には艶消しの施された細長い棒が握られている。鞘だ。
「ストラ……ディスタ!?」
朱美の呟くような言葉がやけに大きく森に響いた。
目の前に現れたのは人狼と呼ばれるハンター、ヴォルフ・ストラディスタだった。
「守りを固めて後は俺達に任せろ」
ヴォルフは肩越しに振り向きながら言った。
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