森林での戦い
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囲を見渡していたヴォルフの耳が微かな破裂音を捉えた。
音のした方向は南西。ここからでは木ばかりで何も見えないが、あれは間違いなく音爆弾の炸裂音だった。
「行くぞ。音が聞こえた」
ヴォルフは木から飛び降りて下で休んでいた面々に告げる。
「了解!」
「分かった」
ヴォルフの声に神無達は一斉に立ち上がった。
「こっちだ。行くぞ」
ヴォルフが先頭に立って走り始める。当然彼等が十分に追い付けるスピードだ。
「ヴォルフさん。何が聞こえたんだニャア?」
隣に並ぶように走るトラが尋ねてくる。獣人族である自分が聞こえない音を捉えられた事が信じられなかったようだ。
「音爆弾の音だ。音の拡散具合からしてそんなに遠くない」
トラは大したことは無いとでも言うように語るヴォルフをみて、改めてこの人狼と呼ばれる男の凄まじさを思い知った。距離だけではなく無数の木々によって音が遮られているのにも関わらず、音爆弾の音を聞き取ったのだ。
人間よりも感覚器官が発達している獣人族が捉えられなかった音を、人間であるヴォルフ・ストラディスタは捉えたという事実は信じがたい話だった。
しかし、トラにはこのハンターが嘘をつけるような人間には見えない。紛れも無く真実なのだろう。そして――――――
「近いな」
――――――彼のその言葉の直後、モンスターの悲鳴とも咆哮とも受け取れる声と共に銃声が森の奥から響いてくる。
「戦闘準備!」
ヴォルフの声で全員が各々の武器をすぐに構えられるようにしつつ、自然と隊列を整わせ始めた。
「このぉっ!」
振るわれる太刀がドスジャギィの首を捉えるが、その刀身が血に塗れている上に担い手に疲労が蓄積されてきたこともあって、その刃は浅く食い込むだけで止まった。
「ギャオオオッ!」
ドスジャギィがたった今自分を切り付けたハンターを睨むと、棘の生えた尾を振るってハンターを弾き飛ばす。
「くあぁッ!?」
尾の一撃を脇腹に貰った男は三メートルほど宙を舞って地面に叩き付けられた。地面を滑って止まった先には雌のジャギィノスが待ち構えていた。
「タク!」
「くっ!?」
仲間の呼びかけで状況を把握した男――――――タクは大口を開けて喰らい付こうとして来たジャギィノスの顎を左に転がって躱しつつ、腰の後ろに差しておいた手斧を引き抜いてジャギィノスの左足目掛けて振り下ろした。
「ギャワンッ!!」
足を半ばまで両断されかけたジャギィノスは悲鳴を上げながらも、すぐに自分の足に斧を落としたハンターに喰らい付こうと顔を向けるが、途端に顔目掛けて土が投げつけられる。目潰しだ。
目を封じられたジャギィノスの足から斧を?ぎ取ると、後方から一頭のジャギィが飛び掛ってくるのを視界が捉えた。
「くそ……っ!」
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