第三十八話 傍に置くのには理由が有るんだ
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イトが言うとアンスバッハ目を瞑った。
「もうそちらには勝ち目はないと思いますが?」
『……我々に降伏しろと言うのかな』
シュトライトの声には興奮は無い。アンスバッハも静かなままだ。この二人は現実を見ている、貴族連合に勝ち目はないと判断したようだ。
「アマーリエ様、エリザベート様、クリスティーネ様、サビーネ様……」
『なるほど、その事か……』
「如何思われます?」
フェルナーの問い掛けにスクリーンの二人が顔を見合わせた。そしてシュトライトが息を吐いた。
『正直、何も考えてはいなかった。大敗の連絡が有ってその後始末で大変だったからな。酷い混乱だった』
『そちらではどう考えているのかな、アマーリエ様達の処遇を。教えてくれないか』
アンスバッハがこちらの意見を聞きたがっている。敗北は必死と見てこの反乱をどう幕引きするのか、こちらの意見を聞いて考えようというのだろう。問題はブラウンシュバイク公にどう受け入れさせるのか……。
「アントン、代わろう。アンスバッハ准将、シュトライト准将、エーリッヒ・ヴァレンシュタインです」
フェルナーの隣に座って向こうからも見える位置に移動した。アンスバッハとシュトライトは驚いたようだ。顔を見合わせている。
「私はアマーリエ様達を助命するべきだと考えています。リヒテンラーデ侯とも相談しました。侯もアマーリエ様達の助命については同意しておられます」
また顔を見合わせた。
『ブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家の存続は』
「残念ですが反逆を起こした以上、それは認められません。ですが新たに爵位と領地を与えるとの事でした。これまでの様な贅沢は出来ないかもしれませんが生活に不自由する事は無いでしょう」
俺の回答を聞いた二人がそれぞれ頷いている。酷な提案では無いだろう、受け入れは可能なはずだ。第一、この二人はブラウンシュバイク公の助命を口にしていない。反逆に失敗した以上、ブラウンシュバイク公の死は必然と思っているに違いない……。
だが妻二人、娘二人はフリードリヒ四世の血を引いている。そして皇族も少ない、だからこちらは彼女達の命を助けようと言っているのだ。もし皇族も多く、皇帝が厳しい人物なら問答無用で殺されている筈だ。酷な提案どころかかなり寛大な提案と言って良い。
『分かりました。その条件でお願いします』
口を開いたのはアンスバッハだ。
「ブラウンシュバイク公はこの条件を受け入れるでしょうか?」
『……受け入れざるを得ないでしょう。敗戦の連絡が有ってから要塞からは離脱者が続出しています。戻ってくる艦隊からも離脱者が出ているようです。これ以上は戦えません』
少しの間沈黙が部屋に満ちた。逃げ出す人間が出たか、こうなると早い者勝ちで逃げ出すだろうな。ガイエスブルク要塞はガラ
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