第三十八話 傍に置くのには理由が有るんだ
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姫の弟だろう、もっと良い任務が有ったはずだが……」
思わず苦笑が漏れた。
「寵姫の弟だからさ。前線に出して戦死されては困る、だからといってオーディンに置くのは目障りだ。それで辺境星域の哨戒任務に回された。ヴァンフリート星域の会戦の後、軍上層部の間でそう決まったらしい」
俺が答えるとフェルナーが口笛を吹いた。“特別扱いだな、それとも厄介者扱いか”と言った。その通りだ、その両方だろう。俺自身持て余している部分が有る。
寵姫の兄弟なんてこれまでにも幾らでも居ただろう。だが有能で国家の役に立ったなんて話しは聞いた事が無い。大体が姉か妹を利用して権力を振るうか蓄財に励むのが精々だった筈だ。間違っても軍人として戦場で武勲を上げて出世しようなんて考える奴は居なかっただろう。軍上層部は目障りだ、寵姫の弟ならそれらしく安全な所に引っ込んでろ、そう思ったに違いない。
「フリードリヒ四世陛下が亡くなったから総司令部に入れたのか? 皇帝との関係は切れたと」
「前半は正しい、だが後半は違う。それならアンネローゼが寵姫で無くなった時点で元帥府に入れている」
「……」
フェルナーが訝しげな表情をしていた。自然と溜息が出た。
「内乱が起きるのは必至だった。私はミューゼル少将を辺境に置いておくのは危険だと思ったんだ。能力も有れば覇気も有る、おまけに感情の制御が上手く出来ない。何を仕出かすか分からない不安感が有った。だから総司令部に入れたんだ。表向きは幕僚任務に就く事で彼の見識を高めさせると周囲には説明してね」
「なるほど、そういう事か」
フェルナーが頻りに頷いている。
「義弟だから入れたわけではないという事か」
「そういう事だ」
コール音が鳴った。気が付けば時間は十分を過ぎ十五分に近くなっている。
「番号に心当たりはないな」
「俺も無い」
「卿が出てくれ、もしかするとアンスバッハ、シュトライト准将の可能性が有る」
「分かった」
スクリーンに映ったのは黒髪の中年男、アンスバッハ准将だった。俺はスクリーンの横に居るから向こうから見えるのは正面に座ったフェルナーだけだろう。
『フェルナー大佐、卿か。心当たりのない番号だ、誰かと思ったぞ』
「それはこちらもです」
『シュトライト准将、我々に連絡を入れてきたのはフェルナー大佐だ』
『ああ、そのようだな。ところで何の用だ、卿はヴァレンシュタイン元帥に付いたと聞いた。我々とは敵の筈だが』
スクリーンに男がもう一人映った。なるほど、相談してこちらに連絡を入れてきたか。フェルナーがチラっと俺を見た。代わるかという事だろう、首を横に振った。
「そちらの艦隊が敗北したというのは御存じですか?」
『知っている、先程リッテンハイム侯も戦死したと連絡が有った。手酷い敗北だな』
シュトラ
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