拠点フェイズ 3
拠点フェイズ 馬正
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「やれやれ……悪い酔い方だなぁ」
何かおやじが言ったが、私には聞こえなかった。
―― 盾二 side 漢中内城 ――
あたたた……なんでこうなった。
生身で壁をぶち破るなんて……壁の素材が土壁だったからよかったものの、コンクリートだったら死んでいるぞ。
おまけに、左頬がめっちゃ腫れ上がっているし……俺、ホントに何をしたんだ。
ここまで愛紗が怒るなんて……
「はぁ……」
廊下を歩きつつ、嘆息する。
今はすでに日が傾き、夕暮れにもなろうかという時分。
昨日といい、政務ほったらかしにしちゃったしな……
朱里も雛里も朝から頑張っていたんだろうし、ちょっとは主らしく仕事しないとな。
とはいえ……なんか違和感があるな。
執務室の扉の前に辿り着きながら、ふとそんなことを思う。
なんだろう……はて。
この廊下……こんなに広かったっけ?
何かいつもと違う。
いつもはもっと……
「ああ、執務室で決済を待つ文官たちがいないのか……へ? いない?」
そうだよ。
毎日毎日、長蛇の列を作っていた文官たちがいない。
一体これは……?
そう思って、執務室を開けると――
「な、なんだこりゃ!?」
山のようにそびえ立つ、竹簡の山があったとさ。
いや、冗談抜きで……
「なんでこんなものが……」
「ああああああああああああああああああああああああああああ! み、御遣い様! 助けてください!」
切羽詰まった声。
見れば、山の陰で疲れ果てた簡雍が、一人隙間に挟まってもがいている。
一体何があったんだ。
「大丈夫か? よっと……」
俺が引っ張り上げると、力なくヨレヨレとした簡雍が息をついた。
「すいません、ありがとうございました……」
「一体これはどういうことだ? こんなに山のような竹簡は……」
「そ、それが……助けてください、御遣い様!」
へ?
何やら涙目になっている耽美な少年。
いや、俺にそういう趣味はないんだけど。
「宰相様たちが……仕事をしてくださらないんです!」
「…………………………はぁ?」
朱里と雛里が……仕事をサボっているだって?
そんなバカな。
あの二人に限って、そんなことは……
「……二人は?」
「この竹簡の向こう……机にいます」
なんだ、いるじゃないか。
でも、仕事をしない?
はて……?
よくわからないが、ともかく二人に会おう。
俺は、山となった竹簡の間を縫うように奥に進むと――
「えへへへ……」
「ぽー……」
二人がいた。
いるのだが………………なんだろう?
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