暁 〜小説投稿サイト〜
箱庭に流れる旋律
歌い手、お祭りを楽しむ
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 今、僕はステージの上に立っている。
 開会式のステージで歌う、という依頼をこなすためだ。

「えー・・・皆さん、どうもこんにちは。僕は今回、サラマンドラの新たな頭首、北側の新たな階層支配者であるサンドラ様よりご依頼を受け、このステージで歌わせていただくことになりました、“音楽シリーズ”の歌、“奇跡の歌い手”のギフト保持者、ジン=ラッセルが率いる“ノーネーム”所属の天歌奏です」

 とりあえず、こういった挨拶は苦手なので正直に言うと飛ばしてしまいたい。
 でも、そう言うわけにもいかない。“ノーネーム”の宣伝、自分の宣伝のためにもしっかりと挨拶をしなければ。

「今回歌う曲は、僕のいた世界にあった曲、ヘンデル作曲のオラトリオ、『ソロモン』より『シバの女王の入場』です。お聴きください」

 そして、そのまま一曲歌いきり、契約では開会、閉会の際に一曲歌う、という形だったのでそのままステージを降りた。

「お疲れ様です、奏さん!タオルとお飲み物、どうぞ!」

 そこにはリリちゃんがいて、僕にタオルとスポーツドリンクを差し出してくれた。
 音響器具はなくても照明器具はあったので、かなり汗をかいた。歌を歌う、という行動もかなりの体力を消耗するので、正直言ってありがたい。

「ありがとう、リリちゃん。いや〜疲れた・・・」
「あれだけの人の前で、ギフトを二つも併用していたらそうなりますよ。それと、初めて奏さんの歌をお聴きしたんですが・・・」

 あれ?何か気になることがあったのかな?

「すっごく綺麗でした!こんなに感動する音楽、初めてです!」

 よかった、プラス側での感想だった。
 目が輝いてるな〜。そこまでですかね?

「奏さんは、昔からそのように歌えたのですか?」
「う〜ん、どうななろう・・・ただ、初めてこのギフトを自覚したのは、六歳くらいのころかな。まあ、かなりいやな思い出になるんだけど・・・」
「す、すいません。そんなことを思い出させてしまって・・・」

 あ、ミスった。今の言い方はないだろ、僕・・・

「大丈夫だよ、もうあれについては乗り切ったから。それよりも、今日の仕事はおしまいだし、お祭りを見て回らない?」
「まだ開会式の途中なのに、離れていいんですか?」
「多分、大丈夫でしょ。別に構いませんよね?」

 念のため、近くにいたスタッフに聞いてみる。

「はい、大丈夫ですよ。サンドラ様からも出番が終わったらご自由に、との言伝を預かっておりますし、もう既に展示会や露店なども始まっていますから」
「ありがとうございます。じゃあ、行こうか?」
「はい!」

 時間はあるし、リリちゃんと一緒にお祭りをまわることにしました。



♪♪♪



 とりあえず、すぐそば
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