閑話 アレスとの出会い2
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は次は戦場になるだろう。
「第七艦隊――元の隊に戻ることが決まっている」
「そうですか」
第七艦隊と思い浮かべるが、それ以上スーンが第七艦隊を知るわけもない。
ただ平和な場所であればいいなと思った。
戦争中で平和も何もないが。
「……なぜ、私がマクワイルド候補生が攻撃されるのを黙って見ていたと思う」
しばらくの沈黙の後に、開かれた言葉にスーンは驚いた。
見上げれば、サハロフが強面の顔に小さく笑みを浮かべている。
「普通であれば、あそこまで酷ければ私は止めなくてはならない。大きな怪我をしなかった事が奇跡的だったからな。そうなる前に、私は止める――それも私の仕事だ。だが、私はそれをしなかった」
「理由があったのですか」
サハロフは、問いかけに頷いた。
視線は真っ直ぐ、フェーガンに振り回されるアレスの姿を捉えている。
「彼の意見は非常に危険なものだ。もちろん同盟は思想の自由は保障されている。だが、彼の意見は危険すぎる。理解できるな」
「……ええ」
帝国と違い、同盟では思想は自由である。
しかし、共和制を批判した彼の姿勢が危険であると捉えられるのも無理はないだろう。
下手をすれば、帝国のスパイと疑われてしまいかねない。
もっとも、ああも公言するスパイなどいるわけもないのであるが。
「最初に聞いた時――ただ何も考えていない馬鹿な発言なら、鉄拳を加えて終わりだ。もし、それが彼の本音であるならば、上に報告をしなければならないだろうと考えていた。だが、彼はどちらも違っていた」
「……」
「彼は決して共和制が嫌いなわけではない。ただ、その問題点を指摘したに過ぎないのだ。多少口は悪かったかもしれないが。……我々は口だけで擁護していて、その本質を理解していなかったのかもしれない」
サハロフが深い息を吐いた。
それは、おそらく自分に向けての発言であったのだろう。
「それをまさか学生に教えられるとは思わなかったがね。だから、私は彼を見る事にした」
「……見る、ですか」
「彼は間違えたことを言っているわけでもない。だが、共和制という名前の蜜に酔っている人間にとって、彼の存在は不快なものだろう。実際に陸戦実技の授業で結果になって表れているように」
アレスの考え方は、おそらくは正しいものなのだろう。
だが、人間は正しい意見を素直に受けいられるほど優しくはない。
ましてや、まだ十五ほどの学生である。
自分の反対の意見に対して、さらに口で勝つことも出来なければ、出来る事は暴力でしかない。
自分より弱いくせに何を言っているのだと。
「彼は――彼の意見は正しいが故に、彼には説得する力を求められる。間違えていないと――周囲に理解させるほどの力を。だから、私は見ていた―
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