ヴァンフリート星域会戦 その一
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新航路データを航行艦船に送っている。
特に、このような戦場域での灯台の設置は同盟も帝国も懸念の声が上がっていたが、フェザーン側の強い要望で設置したという経緯がある。
その意味を、新型巡航艦ラトの艦長であるヤン中佐が艦長の机の上に座ってぼやく。
「フェザーンは、これから戦闘が激しくなると読んでいるんだろうな」
(正確には、激しくさせると言った所か)
あえて呟かなかった事を考えるためにヤンは頭に載せているベレー帽越しに頭をかく。
フェザーンは先の帝国内戦で敗者側に全額投資して大惨敗を喫したばかりである。
商人国家だから大損をどこかで回収する算段なのだろうが、とりあえずイゼルローンに帝国軍の要塞が置かれた事による軍事緊張を使って何かするつもりなのだろう。
だが、その何かまでヤンは分からない。
同盟は現状においてイゼルローン攻略戦を行うつもりはまったくない。
帝国は外征よりも内乱の傷を癒す為の時間を欲している。
次々とワープアウトするヤンが所属する第五艦隊艦艇を眺めながら考えていたヤンが、ひときわ新しい艦隊母艦の姿を見て口笛をふく。
「どうしました?艦長?」
「なに、美しい船だと思ってね。
ケストレル……だっけ?」
「はい。ケストレルです」
緑髪の副官もヤンが眺めるモニターを一緒に眺めるがこの船は艦隊母艦ではない。
ケストレル級航宙母艦一番艦。ケストレル。
そのコンセプトは単純明快。
『搭載量が命の宙母ならば、艦隊母艦の船体で宙母作ってみたらよくね?』
10000メートルの艦隊母艦用船体を使った結果、これ一隻でスパルタニアン3000機を運用できるという文字通りの化け物宙母。
もちろん、強襲揚陸艦も搭載可能になっており、近距離の殴り合いにおいて無類の強さを誇るだろうという触れ込みで作れた船。
予算案が通った事によって、艦隊人員の削減とAI艦の搭載が決定している為、当時偽装中だったこのケストレルはその実験艦とされたのである。
複数のスパルタニアンを同時にコントロールできる無人AIシステム『メイヴ』を搭載してはいるが、スパルタニアン半分は有人パイロットが操縦していたりする。
最初は完全全自動を目指していたのだが、それに異を唱えた四人のパイロットが模擬戦にて『メイヴ』システムに完勝してしまった為である。
そのパイロットの名前は、
オリビエ・ポプラン
イワン・コーネフ
ウォーレン・ヒューズ
サレ・アジズ・シェイクリ
の四人で、いまや同盟軍のトップエースとなった連中である。
『メイヴ』の学習が追いついていないのか、人間に出てくるある種の天才に究極の汎用性であるAIが対応できないのか研究者の間でもこの模擬戦の評価は分かれているという。
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