第13話「京都―初見」
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そう問われれば、タケル自身も答えをつまらせるだろう。
「はぁ」
小さなため息が漏れる。
どうにもここの世界に来てからというもの調子がおかしい。それはもちろん体調不良などではなく、自分の性格、というか行動というか。そういったものが、知っているはずの自分とはところどころ矛盾している。
教え子が軽い怪我をしただけで助けに出たり、ミッション中に教え子を気にしたり、ネギたちの厄介ごとに首を突っ込んだり。
……一番最後のはタケル自身が苛立っていたせい、というのが大半だが。
彼にとって、大事なのは自分だけ。
――そう思っていたんだが。
ネギやカエデ、優しくしてくれる教師達に、明るく接してくれる生徒達。この世界にはタケルが経験したことのない温かみがあったせいか、どこか自分がヌルくなっている気がする。
彼等という存在はタケルの中で、確かに大きくなってきている。
――……そういえば、そもそもこの世界に来たのもアキラをかばったから、だったか。
今の自分が100点系の星人と戦えば、確実に勝てない。なぜだかそんな気がする。
「……」
それを認めたくなくて、首を振り、部屋に戻ろうとして「タケルの旦那ぁ!」と何やらモサモサしたモノが顔に張り付いた。
「……?」
それを手でつまみ、眼前に。
「……ネギのオコジョ……だったか?」
「カモと呼んでくだせぇ!」
タケルの手から離れて肩に移動。格好つけたつもりなのか、ビシリと立ち上がった。
「何のようだ?」
もちろん、カモのアクションは無視して尋ねる。
「それっスよ、旦那!」
「?」
「実は……」
ゴニョゴニョと切り出されたカモの話に、タケルはため息をついた。
「うう〜〜、ああーーどうすれば……」
廊下を走る一人の少年、ネギがいた。半ば目を閉じ、頭を抱えながら走っているせいか、フラフラと蛇行して今にも誰かにぶつかってしまいそうに……ぶつかった。
「いたた、あうう、すいません」
「……ネギか」
ネギが尻餅をついているのとは対照的に、ぶつかった相手は真っ直ぐと無表情に立ち尽くしていた。
「た、タケルさん……」
ネギがどこかホッとしたような声を漏らしたのは気のせいではないだろう。だが、タケルは容赦なく、最もネギが触れられたくない話題に触れる。
「宮崎さんに告白されたらしいが?」
「う、うう!? なんでそのことを……? って、あ! い、いえ決してそんなことは」
一瞬だけ本音が。すぐに誤魔化すようにアタフタと去ろうとするネギの腕をつかみ「少し、歩こう」
珍しく言い出したタケルに、ネギはその顔を強張らせた。
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