第13話「京都―初見」
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太陽が暖かく照りつけ、空は青く澄み渡り、雲はまるで視界を彩るかのように流れている。時々思い出したかのように飛び回る鳥がさらに空を華やかに飾りつける。
「俺はミッションを遂行するためのコピーだ。だから本当は自分のことがよければ他はどうでも良いと思っている。」
まるで少年と合わせ鏡のような答えを、のんびりと。
「おまえのいう『世界を救う』という言葉がどういう意味を含んでいるか、この際置いておく。だから、そうだな……この先、気が向いたら。もしかしたら……――」
――これじゃ、だめか?
と付け加えたタケルが立ち上がり、少年と顔を見合わせる。少年が考えるように呟いた。
「……君も作られた命なのかい?」
「人形ではないが」
タケルの意地の悪い言葉には反応を見せず、少年は頷く。
「わかった、君に関してはまた後日にスカウトさせてもらうよ」
「ああ」
「……今日は少し、有意義だった気がする」
じゃあ、と少年の足元から水が舞い上がり、少年に巻きついていく。少年が水に溶けようとその姿を水に覆った時、タケルが呟いた。
「俺は大和猛」
その言葉に、水がピタリと止み、答えが返ってきた。
「僕はフェイト。フェイト・アーウェルンクス」
そして、水はその場に落ちて、フェイトごと溶けて消えた。
「……また、な」
その言葉は風に吹き消されたが、きっとそれはフェイトに届いた。なぜか、そう思えるタケルだった。
自由時間を終えて、旅館に戻っていた。
夕方過ぎ、タケルは先生方との打ち合わせを終えて、部屋から外を眺めていた。
陽が暮れ始め、全てを赤く染め上げている。空ではカラスが数羽で連なり、平和な鳴声を挙げ、地面に目を向ければ、何人かの生徒が楽しそうに、談笑を交わしていた。
「世界を救う……か」
昼に会ったフェイトのことを考えていた。子どものはずなのに、それらしさが一切ないのは、彼が自身を人形と評したことに関係があるのだろうか。
世界を救うという彼の言葉は胡散臭い。それはもう圧倒的に。超がつくほどに。
だが、本当は世界などどうでもいい。タケルにとって、大事なのは自分だけ。他がどうなろうとも知ったことではない。
いざとなれば、誰であろうとも切り捨てる。それが大和猛の本質であり、歩んできた人生。
彼の人間性に惹かれるものがあったのは確かだった。まるで、この世界に来てから、初めての友人が出来たような、そんな感覚に陥った。
正直に言ってしまえば、彼と共に行ってみたいとも思えた。彼が一体何を考えているのか、目的は何なのか。それら全てを知りたいとも思った。
――ならば、なぜ彼の仲間にならなかった?
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