第一物語・後半-日来独立編-
第五十一章 その場所へ想い走らせたならば《2》
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付き合ってられないわ」
無視し、実之芽は踏み込み、打撃を放つ。
雷をまとった拳は、セーランへと向けられた。
避けなければ当たる。だが、あえてセーランは動かなかった。
動かず、放たれた拳を受け止めた。
左手でがっちりと掴んで。
「何がだ、何が無駄話しなんだ」
「貴方と話す意味は無い。そう言ってるのよ、それも分からないの?」
「分からないね。だから俺は話し始める」
掴んだまま。
離そうと彼方は雷を流してくるが構わない。今はそれに構っている暇は無い。
大体、流魔操作によって身体の表面に膜をつくってしまえば、膜に雷は流れるのだから痛くもかゆくもない。
雷は表面を走る。内部には浸透しない。
セーランは握る力を維持しながら、息を吸い、話し始める。
「俺はあいつの元に行く。その前にお前が立ちはだかるっていうんだったら、お前を倒して行く。……なあ、この戦いになんて意味無いだろ」
「何が意味が無いの」
「自身らの長を殺すために、救いに来るものを阻んである。何故そんなに殺したい。幾年も辰ノ大花を治めてきた家系の者を、何故そんなにも殺したい」
「話す必要は無いわ」
「なら、別にいいさ。もうあいつとは最後だ。悔いの残らないようにするといい」
セーランは握っていた手を離し、瞬間。
相手が反撃してくる前に行動した。
腹部への打撃。
拳による打撃が、距離を離そうとした実之芽の腹部へと当たった。
息が漏れる音が実之芽の口から出て、彼女は背後へと数歩後退りした。
腹部を押さえながら、睨むように顔を上げた。
平然と彼女を見るセーランは、何処か冷たいような雰囲気がした。
馬鹿なセーランではなく、何かを背負って生きる者の、誰も自分のことは解ってくれないのだと、思い込んだ表情に似ていた。
「あいつは奪っていく。この辰ノ大花からな」
「何を言って――」
言葉を紡ぐ前に、
「どうせお前達は宇天長を消したいんだろ? だったら奪ってやる。同じことだ。辰ノ大花から委伊達家は消える。喜ばしいことだろ、そんなにも消したかった委伊達家が消えるんだからさ」
「辰ノ大花を愚弄する気なの!」
「救えない奴らなりの示し方ってもんがあるだろうがよ。だけどな、裏で宇天長の救出に動き出している者達もいるんだよ。殆どの奴らは恥を捨て去って“助けてくれ”と言っては来なかったけどな、少ないけどいたんだよ。そんな奴らがな」
開いた距離を縮ませるように、一歩を踏み込むセーラン。
来るセーランに対し、雷撃を放つ実之芽だが。放った雷撃はセーランには当たらなかった。
何故、と疑問に思い、分からなかったからなのか、わけも分からず後退りをした自分に気付く。
不利になったわけではない。
どちらかと言えば、自身の方が有利ではないのか
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