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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission10 ヘカトンベ
(4) マクスバード/リーゼ港 B
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ホッ、ゲホッ!」

 弾みで骸殻が解け、二つの懐中時計が手の届かない場所へ転がってしまった。
 クロノスがユティに向けて転移の術式を編み上げる。

「『クルスニクの鍵』だけでも!」
「させるか!!」


 ――この時、ユースティア・レイシィは人生16年で最大の驚きを知った。

 路地裏に置いて来たはずのユリウスが、横ざまにクロノスにタックルしたからだ。


「ユースティア! 時計を!」

 ユティは慌てて立って懐中時計まで走り、銀時計の一つを掬う勢いでユリウスへと放り投げた。

(って、何してるの、ワタシ。ユリウスととーさまは同じ人じゃないって、間違えるなって。でも、だって、とーさまの声で目で、そうしなさいって、言われた、らワタシ、わ、たし…)

 クロノスの転移術式に巻き込まれながらも、ユリウスは器用に銀時計をキャッチした。

 ――同じ過ちを犯したなら、結末もまた同じくなる。
 クロノスからユティを庇って(・・・・・・・)、彼は再びこの世界から消失した。
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