閑話 アレスとの出会い1
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それを実現するのは我々だ!」
フォークが一際大きく声をあげれば、それに従う男達が拍手をした。
おそらくは興奮してきたのだろう。
同意を求めるように、関わりのもたない周囲にも声をかけている。
そして、それは――アレスの背にもかかった。
彼もまた優秀と言って良い成績を取っている。しかし、彼の場合は取り巻きを従えることはなく、一人でいる事が多かった。
僕も入校式で席が隣だったとはいえ、知っていたのはその程度だ。
黙って過去の戦術シミュレータの試合を見ていたアレスは、振り返り、怪訝な顔をした。
きっと聞こえていなかったのだろう。
「なんだ?」
「何だじゃない。マクワイルドもそう思うだろう?」
「いや。聞いていなかったわけだが、何がそう思うんだ?」
「だから」
馬鹿だなとばかりに、フォークの隣に座っていた男がため息を吐いた。
その大げさな様子に周囲から笑いが漏れる。
ますます怪訝さを深めるアレスに、助け船を出すように近くにいた別の男が当然とばかりに手を広げた。
「帝国主義はいずれ共和制の前に膝をつくってことさ」
同意を求めるような視線に、アレスは一瞬眉をひそめる。
そして、情け容赦なく一言。
「君らの頭にはお花畑が咲いているのか?」
+ + +
気色ばむ者たちに、アレスは眉をひそめていた。
本当にわかっていない様子だった。
今にも殴りかからんばかりの様子に、帰ろうかなとスーンは思った。
もしここで暴力沙汰になったのならば、きっとスーンも同罪となるだろう。
それでも、男達を止めたのはフォークだった。
その時は感謝したものだったが、後になって思えば、この時のフォークはアレスを論破してみせようとしたのだろう。同じクラスで――さらに成績でもトップレベルを争う二人であったから、早いうちに芽を摘もうとしたのだ。
だが、さらに今になって思う。
それはかの有名なローゼンリッターに対して、丸腰で挑むようなものだと。
即ち、無謀。
「お花畑とは酷い言い方じゃないか、マクワイルド候補生」
「いや。そうとしか思えないが。なぜ、帝国が何もしないのに負けてくれる」
「それは帝国主義では、優秀な人材が育たないからさ」
いいかとフォークが指を立てて語ったのは、帝国主義の欠点だ。
皇帝の意見が絶対である帝国主義では、例え優秀であっても庶民が貴族よりも上に行くことがない。
その貴族によって抑圧された民衆は、いくら頑張っても貴族に税として取られてしまうため、生産性が乏しくなる。
さらに言えば、そんな民衆は共和制を歓迎し、ひとたび攻勢に出れば、我々を歓迎してくれるだろうと。
要点だけを言えば、そんなところだろうか。
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