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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第27話 「冷静と情熱のあいだ」
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っちが民主主義の政治家なんだか」
「笑えないね」
「しかし帝国は本当にフェザーンを抜けて、イゼルローンに向かうと思いますか?」

 同盟がイゼルローンを攻めると決めた途端、帝国はフェザーンに向けて貴族を送ると発表した。
 あれはイゼルローンへの援軍だと思われている。
 確かに、そうだとは思うが……。
 いったい何を目的としているんだ?

「おそらくダゴン会戦の再来だと思う。あの皇太子、イゼルローン回廊を、巨大なT字路と見立てたんだ。三方向からの包囲殲滅戦。目の前にはイゼルローン要塞。帝国側からは四個艦隊の援軍、そして同盟側からも、四個艦隊を持って包囲する。背後は暗礁空域。袋小路とはこの事だ」
「うわっ、校長は?」
「シトレ校長は気づいてるよ。だから動いていない」
「ただ、政治家達が煩いようですけどね」
「あからさまに、やろうとしている事が分かっているのに、理解できないとはそれこそ、何を考えているんだか」

 やられるのが分かっているのに、それを理解できない政治家。
 まったくどうしようもないな。
 支持率よりも、選挙よりも有権者の方が、先にいなくなるかもしれない。
 シトレ校長も頭を抱えているだろうな。

「和平交渉のチャンスなんだけどね。いや、交渉しなくてもこちらが動かなければ、向こうは無理に出征する気はないだろう」
「戦争よりも、国内改革ですか?」
「そう、そして国内改革が形になったとき、今度は経済戦争ということになるかもしれないけどね。それでも実際に戦争するより、だいぶんマシだと思う」
「戦死者がでないだけ、はるかにマシですね」

 まったく有能な敵より怖いのは無能な味方ですか。
 主戦派の声が大きいからなー。
 そういえば、憂国騎士団はここ最近、大人しいな。
 いったい何があったのやら?

 ■統帥作戦本部 ジョアン。レベロ■

「軍は大丈夫なのか?」
「大丈夫とは、どういう意味だ」

 しまった失言だった。
 シトレが椅子に座って、腕を組みつつしかめっ面をしている。
 眉間に深い皺が刻まれていた。

「帝国の動きは?」
「ない」

 はっきりとした口調だ。
 しかし苛つきが滲み出ている。

「ない?」
「こちらの動きを見ているのだろう」
「貴族の不満が、そろそろでてきても……」
「甘いぞ。今までの帝国と一緒にするな。不満を露にすれば、問答無用に取り潰せるんだ」
「反乱が起きるとか」
「起きん。いま起こるとしたら皇太子が亡くなった、とかだろう」

 やはり皇太子か……。
 皇太子一人に同盟は振り回されている。

「本当に反乱は起きないか?」
「誰が中心に立って、貴族を纏めるというんだ」
「反皇太子派とか、反フリードリヒ四世派とか、いないの
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