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Black Engel and White Engels
魔法少女はじめました
エイブル・アーチャー1999
「その日、公園にて」
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「遅くなりました。」
そう言って男は1通の書類を私に差し出した。
表題には「第1次調査報告書」とだけ記載された書類だ。

「国立天文台が地球に落下する超小型の隕石を確認したのが昨日0200。そこからJAXAと文科省、内閣官房、そして我が方に来たのが朝0700。超小型にもかかわらず、大気圏突入時に消滅しなかったことから何かしらの特別な材質でできたものだと判断したものの情報が少なく、正規ルートはお手上げ。で、こっちに回ってきたもののこっちも情報がなく出来た報告書がこれというわけです。」
スタッフの服部正樹くんの報告に耳を傾けながら、私はコーヒーを啜った。

「なるほど。確かに第1次報告だね。最も、起こってから35時間で完全な報告書を求めてはいないよ。引き続き情報の収集にあたってくれ。」
そう言って、私たちは席を立って店を出た。

高田馬場駅の方に向かって歩いていくと、服部君が私に尋ねた。
「如何ですか?新しい宿舎は?」
「最高だよ。何が最高かって、高円寺で飲みに行けるのがいいねぇ。」
そう、私はこれまでの宿舎の他に都内に宿舎を構えることになったのだ。場所は高円寺のマンション。中古の物件ながらきちんと各種クリーニングが施された居住性抜群の宿舎である。

「それは良かったです。で、進捗状況は?」
「勝負の決まっているゲームを強引に少しでも有利な状況にもって来ようとしているのだ。無理も承知だし、高倍率のチップをかけているのもわかっている。相手の持ち札はフルハウスでこっちがワンペア、かな?そんな状況のポーカーを少なくともフルハウスでeven、できればフォーカード以上で上がりにしないと後がない。」
「分かっています。」
「それを踏まえて言うとだね。」

私はこれまでの真剣な口調を少し砕いて言葉を続けた。
「勝負は始まったばかりだ。1983年の状況開始から16年。祖国(日本国)が統一され、嘉手納が巨大な宇宙基地になって来年には有人宇宙船の打ち上げだ。そんなタイムラインの中でこれを行うなんてどうやっても無理ゲーでしかないよ。」
そう言って僕はテーブルの上に置かれたファイルを右人差し指でコンコンと叩いた。
「そうですね。普通に考えれば無理ゲーですね。」
僕はにやりと口元を上げた。

「それを強引にフルハウスに持っていくために“我々”がいるのではないかね?服部君。このゲームは我々の勝ちで行かせてもらおうではないか?そのために持てるすべてを用いて周辺情勢を安定化させたのだからな。」
「計画名はなんとしますか?」
服部君が笑顔を浮かべて言った。
「エイブル・アーチャーだ。」
「エイブル・アーチャーですか?80年代にNATO軍が対東側の軍事演習で使用したコードネームですね。」
「そうだ。これは、我が勢力の戦いなのだよ。
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